マナビジョンキャリアトップ大学生活読んでひんやり…稲川淳二の大学生怪談「タイムカプセル」(前編)

読んでひんやり…
稲川淳二の大学生怪談「タイムカプセル」(前編)

  • 大学生活
  • 2017.07.31

怪談でおなじみの稲川淳二さんに、大学生が主人公のお話を語ってもらいました。これを読んだら今夜はクーラーなしで眠れるはず。いや、怖くて眠れないかも!?まずは前編から!


タイムカプセル(前編)

稲川淳二:このお話の主人公は、既に亡くなっています。仮に彼の名前をカノウ君、としときましょうか。東京の大学に入学したんですが、もう夏も近いので、窓を開け放って引っ越し以来初めての大掃除をしたわけですよね。

で、ものを片付けてると、ふと何かの間から写真が一枚落ちたんで、はてなと思って拾って見てみると、その写真、なんだか妙な写真なんですよね。自分の中学の頃の写真なんですが、目線がカメラの方を向いていないんですよ。誰かがこっそり撮ったような、そんな写真なんです。で、後ろの方に小さく神社が写っているんですが、これがなんだか妙に気持ちが悪い。
だいたい、写真はみんな実家に置いてきているわけだ。こんな写真あるわけない。それに、見覚えが全くない写真なんですよね。変な写真だな、と思ってそのまま引き出しにしまい込んだ。

そこへ郵便物が届いた。中学時代の3年A組のクラス会の案内で、夏休みにみんなでしばらくぶりに会いましょう、と書いてあるんですね。差出人は、親友のマエダになってて、あーそうか、マエダが幹事なんだな、と思ってね。

さて夏休みになったんで、彼は故郷へ帰ったわけですよね。で、クラス会に出席した。懐かしい顔がそろってて、マエダがいる。サトウがいる。イシカワがいるわけだ。「おーい、しばらくぶり」「おー変わんねえな、元気か」って、えぇ、それはもう盛り上がるわけですよね。東京の大学に行った人間もいれば、地元の学校へ行った人間もいるし、まあ社会人になった人もいる。みんなそれぞれの人生を歩んでるわけですよね。若い男女がしばらくぶりに顔を合わせたわけですから、そりゃあもう、盛り上がって当たり前。あっちこっちで笑い声、話し声がしているわけだ。

このクラス会、中学時代の3年A組全員が参加したんですよね。まあ正確に言うと、亡くなった1人を除いた全員が、そろった。話が尽きないわけだ。
一次会が終わり、二次会、三次会を経て、最終的に残ったのはマエダ、サトウ、イシカワ、カノウの4人。

お店もやってないんで、仕切り屋のマエダがね、「もう遅いしさ、まだみんな当分こっちにいるんだろうからさ、またこの続きは日を改めてやろう」って解散したわけだ。

翌日、さすがに慣れない酒を飲んだもんですからね、カノウくん家でゴロゴロしてた。そこへ、マエダから電話が来た。
出るとね、「おい、どうだ、明日また会わねえか。サトウやイシカワにも連絡しとくよ」「おう、会おうや」って話になったわけだ。

翌日4人がそろった。すると開口一番ね、マエダが「おい、一昨日、クラス会でな。おかしなことがあったんだよ」と言い出した。
「クラス会の幹事をしているもう一人が、来る人に順番に靴の札を渡していったら、39番までいった」って言うんですよ。
おかしい。生徒は全部で37人。先生入れて38人。一つ多い。でもカードの数字に間違いはない。
で、調べてみると靴の数はちゃんと39ある。変だと思って、一次会が終わってみんなが出ていったあとを見たら、靴はみんななくなったっていう。

「ま、んなことはいいや、どこ行こうか」という話になり、マエダがまた仕切ってね、「おいどうだ、3年のときに行った山の上の神社、あそこ行ってみないか」って言った。おう、行ってみようかって話になったんですね。

この山の上の神社というのはね、中学3年生のときに、クラスごとの思い出作りにA組はハイキングに行こうって話になり、その途中で通った小高い山の上にある神社で。
ここで、担任の先生がね、「おいみんないいか、この神社はな、自分の願い事を紙に書いて、小さく折って名前を書いて、この箱に入れておくと、それが叶うんだぞ。ただこれな、人に話したり見せたりすると御利益がなくなるからな」って紙を配ってくれたわけだ。
みんな、茶化したり冗談言ったりもするんですけども、そこは中学生ですからね、まじめにみんな書いたわけだ。で、その箱に入れた。そういう思い出のある神社なんですよね。

もうあれから4年経っているわけだ。マエダが車で来てたんで、それに乗っていってみた。車から降りてなだらかな山道を歩いてしばらく行くとね、向こうに小さなお社が見えた。
カノウ君、ふっと思った。「そうか、東京の家で見た写真はあのハイキングのとき、撮った写真なんだ。いったい誰が撮ったんだろうな」

すると、先に歩いてたマエダが振り返って「みんな何書いたか覚えているか。人のも見ちゃおうか」って言うんで、カノウ君が「それはやめた方がいいよ」なんて言っているうちに、マエダ君、だんだん早足になって、もう社のとこに行っちゃって「おー、あったぞ」って言ってる。
例のその箱を持って、もうフタを開けているわけだ。
サトウ君が「これってさあ、タイムカプセルだよなあ。当時の俺たちの思い出がさあ、願いがみんなこの中に入っているんだよなあ、あのまんま」って言う。

イシカワ君はというと、「おーあるある」って言いながら自分のをスッとぬいて、広げてニヤニヤしてるんだ。
するとサトウ君が、「あるある、みんなのある。なあ…おい、これウチダのだぜ」って言った。
マエダが「ウチダシゲコのか?…どうする?」って言うんで、カノウ君がね、「やめとけよ」って言った。
このウチダシゲコというのはね、高校のときに、部活でトラックを走っている途中で倒れて、そのまんま亡くなってしまった女の子なんですよね。クラス会に参加できなかった、亡くなった一人というのはこのウチダシゲコのことで。

マエダが「どうする?」って言うんで、カノウ君が「亡くなった人間のはさ、やめとこうよ…」と、言った。
いつになくサトウがまじめな顔で「うん…だけどさ、あのときウチダはいったい何を願ってたのかな。で、その願いは叶ったのかな。気になるよな」って言った。
マエダがイシカワに「どうする?」と聞くと、イシカワも「うん…気になるよな」って言った。
願いを書いたとき、ウチダシゲコは、もう自分の命があとわずかなんてことは考えてもいなかった。いったい彼女は何を願ったんだろうか。その願いは叶ったんだろうか。確かに気になった。と、マエダがね、サトウからその紙をふっとひったくるようにして取って広げちゃった。で、何とも言えない顔をしてね、そのまんまカノウ君にひゅっと渡した。

そこには、「カノウ君が大好きです。カノウ君が私のことを好きになってくれますように」って書いてあった。
マエダが、「おい、ウチダがお前のこと好きだったって、お前知ってたか」って言ったんで、カノウ君が「いや」って答えた。実際、そんなことには全然気がつかなかった。思ってもみなかった。

ふと、この紙の一番下のところに小さく「これを勝手に見たり、人にしゃべったら、必ず殺す」って書いてあった。そりゃあ、書いたときは中学生ですからね、そんな深い意味はないんでしょうけど、今となってみると何だか妙に怖い。

すると、サトウが「あのさ…言うのよそうと思ったんだけどさ、実はな、一昨日のクラス会でな、俺、ウチダシゲコを見たような気がするんだ」って言う。
「え?」みんながサトウの方を見る。
「俺さ、カノウが入ってきたときに、カノウの後ろにちらっとウチダシゲコを見たような気がするんだよなあ」
「じゃあ、クラス会に全員参加したのか」
「ああ。靴の数が合ってたってのもそうなんだよなあ」

…みんな黙っちゃった。するとマエダが「明日さ、ウチダの家に行って仏壇にクラス会の報告をしようじゃないか」って言ったんで、みんなが「ああ、そうしようか」って話になった。

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