マナビジョンキャリアトップ働き方【Career Interview】水族館プロデューサー 中村元さん 弱点のなかにこそ、大逆転のチャンスはある!

【Career Interview】水族館プロデューサー 中村元さん弱点のなかにこそ、大逆転のチャンスはある!

  • 働き方
  • 2017.05.22
プロフィール

中村元さん
大学卒業後、鳥羽水族館に就職。飼育員として働くなかで、客のニーズを的確にとらえて集客力アップに貢献。水族館では国内初となる広報室を設置したり、動物番組の制作に携わったりするなど、海の生き物の情報を伝える役割も担うようになる。2002年の独立後は日本唯一の水族館プロデューサーとなり、新江ノ島水族館(神奈川)など、日本各地の水族館のオープンやリニューアルに携わっている。

上の写真の中村さんの後方には、水のゆらぎが美しい大水槽。奥の床ほど高く、照明を暗くすることで遠近感をつけ、実際よりも広く見せている。


弱点のなかにこそ、大逆転のチャンスはある!

大学受験に失敗。夢は遠ざかった…

高校生のときから漠然と、「メディアの仕事って楽しそうやな」と思っていたんです。だって、映画を見て主人公のスタイルをまねたくなったり、アニメのストーリーから教訓を得たりと、影響力がすごく大きいでしょ?なかでも放送作家みたいな仕事なら、本が好きな自分にもできるかもしれないし、人に影響を与える内容にもかかわれるんじゃないかな。そんなふうに考えて、大学受験では、文学部ばかりを志望したのですが…みごとに全滅。二次募集があった大学の経済学部経営学科に、すべり込みで入る結果になりました。

つまり全く興味のないところに入ってしまったので、大学入学時点で、すでに「自分は何になるかわからんな」という宙ぶらりんな気持ちでしたね。おまけに、経済やマーケティングの勉強もちっともおもしろくない。だから成績もいつもギリギリのところでぶら下がっている状況で、それがますます「メディアに就職できるわけがない」という思いを強めていたんです。

水族館だって一つのメディアだ!

そんな僕が就職できたのが、水族館でした。といっても縁があっただけで、魚が好きなわけでもないし、経済学部ともメディアとも関係がない。けれども図鑑みたいに海の様子や魚を見せるわけだから、「水族館も一つのメディアやん」とプラスにとらえたわけですよね。それと、もう一つ。メディアに行ったところで、成績ギリギリの僕はきっと二流にしかなれない。けれども水族館という無関係の分野なら、大学の旅行サークルで映画をつくったり写真を撮ったりしていた、僕のメディアの知識を生かせるんちゃうか?なんて思うところもあって、ひょいと飛び込み、飼育員からスタートすることになったんです。

でもね、周りは大学で専門知識を身につけてきたり、海の生物が大好きだったりする人たちばかりです。知識がないどころか、小学生の九九すらまともに覚えられなかった僕が、通用するはずがありません。何万種もいる海の生物の名前を覚えることすら苦痛で、はじめは「全然ダメだな」と思ったりもしましたね。

一方、例えばアシカの扱い方とか、ペンギンの力の強さとか…。図鑑やテレビではわからなかったことがあっちにもこっちにもあって、知らない世界を知っていくおもしろさもありました。そして、そんな発見がいっぱいの日々を繰り返すなかで気づいたのは、「水族館ってやっぱりメディアだ」ということ。においとか生態とかをリアルに伝えられる水族館は、やっぱりメディアだと思ったわけです。

背後は、高層ビルの屋上にあるため、水を大量に運べないという弱点を逆手に取って生まれたドーナツ型の水槽。

お客さんをこっそりと尾行!?

状況が変わったのは、そのころからです。いざ水族館をメディアとしてとらえてみると、例えばテレビの視聴率みたいに、水槽によって人気度が違うことが見えてくるわけです。さらにお客さんのニーズを知るためにこっそりと後をつけてみれば、ほとんどの人が解説なんて読んでいないこと、順路の最後のほうは駆け足で見ていること…。「魚を見せたい!」と思っている飼育員にはわからなかったことがたくさん見えてきて、そこから、お客さんは魚そのものではなく、水のゆらぎも水中生物も含めた“水中世界”に魅了されていることに気づいていったわけです。

「これはおもしろい!」と思いましたよね。そして“水中世界”を楽しめるような展示を提案したり、テレビ局に生物の動画を送って全国に情報を流してもらったりするうちに、お客さんの数もぐんぐん増加。入社3年目くらいには「中村の提案に耳を傾けるといいぞ」という雰囲気にもなり、水族館のリニューアルの際の責任者に抜擢されたり、テレビ番組のコーナーをつくらせてもらえるようになったりと、気づいたら水中生物のおもしろさを伝える最強の“メディア”になっていたんです。

弱点があったからこそ気づいたことがある

こうして振り返ってみてもわかるとおり、僕が進んできた道は、高校時代に思い描いていたようなものではありません。でも今となっては、自分がやりたかったようなことをすべてやり、毎日がとても充実しています。そのカギになったと思っているのは、自分が天才でも秀才でもないと自覚していたこと。どういうことかというと、メディア業界なら二流の僕が、もしもメディアという土俵に上がっていたら、一流の人には勝てなかったと思います。でもそれを自覚して水族館という違う土俵に身を置いたことで、ギリギリの成績しか取れなかったマーケティングの知識を使って、お客さんのニーズを探り、メディアへの興味を生かして多くの人々に魅力を伝えることができた。つまり大事なのは、弱点をなかったことにしないこと。人と同じ土俵では勝負せず、弱点を「どう生かすか」を考えた先に、大逆転のヒントは隠れていると思いますよ。

取材協力/サンシャインシティ

中村元さんプロデュースの水族館

施設名マリホ水族館
アクセスJR広島駅よりバス約40分
ホームページ

http://mariho-aquarium.com/

オープン日 6月24日(土)

大人をメインターゲットにした、癒しの水族館。瀬戸内の海や渓流をイメージした六つのゾーンに分かれ、広島の川をリアルに再現した展示など、躍動感にあふれた水中世界が注目だ。

施設名サンシャイン水族館 屋外エリア「マリンガーデン」
アクセスJR池袋駅より徒歩約10分ほか
ホームページ

http://www.sunshinecity.co.jp/

オープン日 7月12日(水)

ペンギンが都会の空を飛んでいるように見えたり、ペリカンが水中でダイナミックに餌を食べるシーンをアクリル越しに見られたりと、想像を越えた生き物と光・水・緑の空間は必見!

中村元さん厳選の30館を紹介!

作品名水族館哲学
〜人生が変わる30館〜
価格本体890円(税込961円)
出版社文藝春秋

廃館寸前の水族館を独自の斬新な手法で蘇らせてきた水族館プロデューサーの中村さんが、多数ある中から30館を選りすぐり、その常識的な枠を超えた「展示」の魅力や見所を紹介。地球と生き物の命、日本のアニミズム、水中世界の癒しなど、書きおろしオールカラー写真満載の文春文庫オリジナル。2017年7月7日刊行予定。

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