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研究File.01 生物多様性

Q.工業の発達で昆虫の色が変わる?

ガの一種、オオシモフリエダシャクは白と黒の異なるタイプがいる。イギリス中部では19世紀の中頃まで白いタイプが大半だったが、20世紀半ばにかけてある地域ではある現象が見られた。それの現象は何?

答えは・・・

ほとんどが黒いタイプになっていた。

産業革命で工業が発達したことにより、工場からの煤煙が、オオシモフリエダシャクが止まる木の幹を黒くしたために、目立つようになった白いタイプが鳥に食べられて減り、黒いタイプが増えた。

なぜ黒いタイプが増えたの?

イギリスの中部地方では、産業革命以前、木の幹は白い地衣類(コケのような菌類と藻類の共生体)が覆っていた。そのため、白いタイプは保護色となり鳥に食べられにくかった。 一方、黒いタイプは、目立つので鳥に食べられやすく、ごくまれにしか見られなかった。

ところが、産業革命が起こり工業が発達すると、工場から排出される二酸化硫黄が地衣類を枯らし、裸になった幹は黒くなってしまった。

幹が黒くなると白いタイプは今度は目立つようになり鳥に食べられやすくなる。逆に黒いタイプは見つかりにくくなり、しだいに数が増えていったのだ。

多様性があるから生き残れる

「生物の多様性」という言葉には、「いろんな種類の生き物がいること」という意味の他に、「同じ種類の中でもいろんなタイプがあること」という意味がある。これを遺伝子の多様性という。

私たち人間は、同じ種でも背の高さや顔の形などが人によって違う。 これは遺伝子が異なるからだ。

他の生き物も、見た目では違いがわかりにくい場合も多いけれど、遺伝子は少しずつ違っている。

たとえば、日本各地にすんでいるゲンジボタルは、見た目はどこの産地のものか区別がつかない。
しかし、光の点滅のパターンやスピードが産地によって違うなど、遺伝子レベルでは6グループに分けられることがわかっている。

オオシモフリエダシャクの例でもわかるように、それぞれが少しでも違っていれば、環境が変化したときに、その誰かが適応して生き残ることができる。
もし、オオシモフリエダシャクに白と黒などの異なるタイプがなかったら、絶滅してしまったかもしれない。
このように、遺伝子の多様性がないと生き残れる可能性が減ってしまうんだ。

また、生き物は一定の数より個体数が少なくなってしまうと、遺伝子の多様性が減ってしまい、絶滅へのスピードが加速してしまうことがある。
極端に数が減ってしまうと、どうしても血縁が近いもの同士でペアにならざるを得なくなり、子どもの数が少なくなったり、病気になりやすくなる。より多くの個体がいて遺伝子の多様性が保たれないと、種の維持はできなくなってしまうのだ。

参考資料:
上田恵介.1999. 擬態 だましあいの進化論〈1〉昆虫の擬態. 築地書館
鈴木浩文、佐藤安志、大場信義.2000.ミトコンドリアDNAからみたゲンジボタル集団の遺伝的な変異と分化.第33回全国ほたる研究会誌30-34

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