エコスタMENU

研究File.01 生物多様性

Q.生き物が多い山の見分けかた?

この2枚の写真はどれも緑豊かな山の写真だね。では、AとBのどちらがよりたくさんの生き物が暮らしているだろうか?

答えは・・・

Bの山。

Aの写真はスギを植林した人工林の山。
Bの写真はブナなどがはえた天然林の山。

生き物が多いのは、もちろんBの天然林の山なのはわかるね。では、どうして天然林の方が生き物が多いのだろう。

天然林は、人工林に比べて複雑な構造をしている。例えばブナの天然林には、高木のブナの下に、やや背の低いカエデやオオカメノキなどが枝を広げている。
その下には低木のヤマツツジやチジマザサのやぶがしげり、地面にはマイヅルソウなどの背の低い草が生育している。

一方、人間が木材を利用するために、天然林を伐採してスギを植えた人工林の構造はとても単純だ。背の高い木はスギだけ。スギの葉で日光が遮られているため、光が林の中まで届かず、他の植物はあまり生きることができない。

天然林と人工林の生物多様性

天然林は、複雑な構造をしているので、それだけ多くの生き物が利用できる場所がある。また、たくさんの種類の植物があれば、種類ごとに葉や茎を食べる昆虫がいて、それを食べる鳥、鳥を食べるタカやワシ、草を食べるカモシカなど、それだけ多様な動物がすむことができる。

だが、スギしかない人工林では、スギを利用する動物しかすむことができず、構造も単純なので利用できる場所も少ない。だから生き物はあまりいないんだ。

AとBの山の風景は、どちらも自然がいっぱいの緑豊かな山に見える。
だが、調べてみると自然の多様性には大きな違いがあり、緑さえあればよいわけではないことがわかる。

自然を単純化すると生き物が減る

人間の活動が自然の多様性を失わせる例は森だけではない。
たとえば田んぼの水路も同じだ。

この写真は同じ水路の上流と下流を写したもの。
左は岸や底は土のままだが、右はコンクリート護岸されている。

もちろん生き物が多いのは、左の水路。
メダカやタナゴなどの魚、エビや淡水二枚貝などがすんでいる。
右の水路にはフナやコイなどの魚しかおらず、ほとんど生き物がいない。

岸や底が土だと流れが速い場所や緩やかな場所、草がはえいている場所など、いろいろな環境がある。
それぞれの環境にはその場所を好む生き物がいるので、環境が多様であるとすむ生物も多いのだ。
これがコンクリート護岸されると単純な環境しかないので、すめる生き物はとても少ない。

ペットとして人気のメダカも絶滅危惧種に指定されて話題になった。
メダカがいなくなった原因の一つが、コンクリート護岸だといわれている。メダカが卵を産みつける水草がないことや、流れが速くなるので疲れて死んでしまうことが原因だ。

お米の栽培だけを考えると、水路は水さえ流れればいいので、コンクリート護岸した方が管理に手間がかからない。
しかし、水路は生き物の生活の場でもあることを考えないとメダカが絶滅してしまうかもしれない。

生物の多様性を守るには、動物や植物だけのことを考えればいいのではなく、環境も含めた生態系の多様性を保全していくことが大事なんだね。

参考資料:
樋口広芳編. 1997. 保全生物学. 東京大学出版会
端憲二. 2005. メダカはどのように危機を乗りこえるか. 農文協
藤巻裕蔵. 1970. 北海道中央部における天然林と人工林の鳥相の比較.北海道林業試験場報告第8号
鈴木悌司.1987.鳥類の生息環境としてのカラマツ人工林.北海道立林業試験場光内季報
写真提供:柴田佳秀

この記事をシェアする