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研究File.01 生物多様性

Q.生物多様性はなぜ失われているのだろうか?

今、地球上の生物多様性が猛スピードで失われている。私たちに必要なはずの生物多様性が、なぜ失われているのだろうか?

生物の世界で、今何が起きているの?

長い年月をかけて育まれてきた生物多様性を、人間はかつてないスピードで壊してしまっている。

例えば、世界では九州地方の面積の1.2倍に当たるおよそ5万2000km2もの森林が毎年消滅している(2000~2010年の調査、年平均)。こうした自然環境の破壊や乱獲などが原因で、生物の絶滅が急速に進んでいる。

一説では、1975年以降、毎年4万種程度が絶滅しているといわれており、今なお多数の種が絶滅の危機に瀕している。しかし、これらは人間が確認できている生物種の話であり、本当はもっと多くの種類の生物が、気づかれることなく絶滅しているかもしれない。

なぜこんな事態に?

生物多様性が失われる主な原因は、人間の活動だ。人間のどんな活動が、どんな危機をもたらしているのだろうか。

生息地の破壊や開発

熱帯林には、地球上の野生生物種の約半分が生息・生育しているといわれている。しかし、こうした熱帯林を、大規模に焼き払って広大な農園にしたり、燃料や建築用資材、地下資源をとるために伐採したりして、人間が破壊してきた。
例えば、携帯電話やパソコンに使われる希少な金属(レアメタル)の違法な採掘のため、マウンテンゴリラが暮らすアフリカの森林が破壊されている。一度伐採された森や個体数の減少した生物を、破壊前の状態までに回復させるのは、とても大変なことだ。日本でも、戦後50年の間に開発と急激な工業化が進み、工業地域をつくるために干潟が埋め立てられ、日本国内の干潟の面積は50年間で約4割も減少してしまった。

乱獲

食料や毛皮などが狙われて乱獲され、絶滅したり、個体数が激減してしまったりした生物もいる。
例えば、ゾウの牙は工芸品の材料として高値で取引されていた。そのため、密猟や乱獲が相次ぎ、20世紀初めには1000万頭がいたといわれるアフリカゾウは、約42万頭にまで落ち込んでいる。
また、私たちが何気なく食べている魚も、実は数が減っている。漁業の対象となる魚の数は、水産業が始まる以前と比べて、約10分の1になってしまったという説もあるほどだ。漁が行われる平均水深は、年々深くなっている。水深の浅いところにいる魚が減り、人間が深いところへ魚を求めるようになっているのだ。

外来種の導入・増加

ペットとして輸入されたり、海外からの荷物に種子がくっついたりして、本来の生息地とはちがう場所へ持ち込まれた生物種を外来種という。外来種の中には、日本にもともと生息していた種(在来種)をえさにしたり、追いやってしまったりして、在来種を絶滅の危機にさらすものも少なくない。
例えば、アライグマは、ペットとして輸入されたものが野生化し、今では北海道や神奈川県などで在来種をえさにしている例が報告されているほか、農作物への被害も出ている。

里山の変化

水田、ため池、雑木林など、さまざまな要素を含み、人間の生活にも密着してきた身近な自然に、里山がある。薪を拾ったり、落ち葉を畑のたい肥にしたりするなど、人為的な手が加わることによって、里山の生態系は維持されてきた。
しかし、化学燃料や化学肥料の導入、さらには、農業従事者の減少や高齢化も重なって、里山は利用されなくなってしまった。農地が姿を消し、かつての雑木林には笹と竹ばかりが生えるなど、里山の生物多様性は低下している。

地球温暖化

地球温暖化により、地球全体の平均気温が4℃以上上昇すると、地球上の40%以上の種が絶滅するのではないかといわれている。20世紀中の気温の上昇のために、生息できる場所を求めて移動した生物もいるのだ。例えば、アラスカの北方林は、気温が1℃上がるごとに約100km北へ分布域を移したという調査結果もある。温暖化の影響で、今後、どんな生物がどのような行動を起こすのか、分からないことは多いが、生態系全体に大きな影響が出る可能性もある。だから、温暖化を少しでもくい止め、生態系への影響を小さくすることが必要なのだ。

今後どうしたらよいか?

生物多様性を守っていくには、上で紹介したような危機を招いている原因を解決していくことが必要だ。1992年に「生物の多様性に関する条約」(生物多様性条約)が結ばれてからは特に、世界規模で生物多様性を守ろうとする動きが活発になっている。日本国内でも、国による保全活動や、市民団体の環境調査など、さまざまな活動が行われている。

危機をつくっている原因には、私たち人間が関係している。普段の生活とかかわりを持つ事柄もある。そうした現状を知り、解決のための活動に参加してみるなど、自分に何ができるかを考え、行動してみよう。

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