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Column
未来をつくる環境仕事人

地域独自のエコ飼料を開発、育てた豚を全国に届けるお仕事

大学で多様な視点から動物について勉強したことが、今の私の基礎になっています。これからも豚を使った新しい取り組みを行い、それを発信することで、農業を盛り上げていきたいと思っています!

食べることで参加するエコ活動「カーボンオフセッとん」

私は、沖縄市の養豚農家さんと一緒に育てた「福幸豚(ふくゆきぶた)」というブランド豚を販売する仕事をしています。

福幸豚は、私が開発した沖縄独自の「エコフィード」を食べて育ちます。エコフィードは、パンや惣菜などの食品加工場から出る加工副産物、飲食店やスーパーから出る食品ロスや残りかす(食品残渣(ざんさ))を種類ごとに分別して、栄養設計に基づいて混ぜ合わせ、乾燥粉末化して豚が食べられるかたちにしたエサのことをいいます。エコフィードの材料は近隣の工場や店舗から提供されるので、地域独自のものができ上がります。私が沖縄で開発したエコフィードは、シークヮーサーやアセロラなど沖縄特有のフルーツが含まれているのが特徴です。

食品残渣は、ふつう生ゴミとして焼却処分されます。たとえば、1tの残渣を焼却すると2tのCO2を排出します。しかし、同じ1tの残渣をエサにすると、4頭の豚を育てることができます。つまり、豚1頭で0.5tのCO2を削減することができるのです。このコンセプトを、私たちは「カーボンオフセッとん(豚)」と呼んでいます。消費者も食べることで参加できる、エコ活動なのです。

私の普段の仕事は、福幸豚の品質管理と販売がメインです。週に1回、提携している養豚農家さんを訪ねて出荷する豚を選びます。その際に、飼育していて困ったことはないか、病気などは出ていないかといった状況を聞きながら豚の品質管理も行い、より高品質の豚肉の生産を目指しています。その他、飲食店で仕入れてもらえるように営業に行ったり、ウェブサイトを通じて販売している精肉のセットや加工品の企画を考えたりしています。

動物と触れ合える仕事は一つじゃない

子どもの頃から動物が好きで、動物と触れ合える仕事に就きたいと思っていました。大学受験のときは獣医を目指して獣医学部を受験しましたが、残念ながら第1志望の大学に合格することはできませんでした。しかし、さまざまな大学を調べるなかで、獣医だけが動物に関わる仕事ではないことに気づいたのです。獣医は資格のひとつでしかないし、学部名に「獣医」という言葉が入っていなくても、動物についてさまざまな視点で学べるところがたくさんあることがわかりました。そして、動物について多方面から学べる動物応用学科のある大学に入学し、卒業研究では再生医療をテーマに選びました。動物を使って医療にも貢献できることが非常に興味深く、その後大学院に進んで遺伝子の働きを調べる研究もしました。

動物に対する興味は、個体から組織、細胞、遺伝子……とマクロからミクロへと移っていきましたが、就職先には養豚場を選び、動物に触れる仕事をしたいという昔からの目標を実現しました。実は、大学で農業や畜産などを学んでも、それを仕事にする人はほとんどいません。日本の農業は高齢化が進んでいて、若い人があまりいないのはこのためです。そんななか、自分がこの分野に進んだら、大学・大学院で学び、研究してきた経験を活かして農業の活性化に貢献できるのではないかと思ったことが、農業を進路に選んだ理由です。

実際、大学で学んだことは仕事に直接つながっています。たとえば、食品製造学で学んだハムやソーセージのつくり方は、そのまま福幸豚の加工品づくりに、動物栄養学で学んだ、動物に必要な栄養やエサのつくり方はエコフィードの開発につながっています。動物生産環境保全学では、家畜の糞尿処理について学びましたが、農場ではそれが一番大切なことで、環境負荷の少ない糞尿処理についてもっと勉強しておけばよかったな、と感じています。また、大学院で身につけた研究の論理的な考え方も、とても役立っています。

最先端の知識と技術を農業に導入し、環境に貢献する

農場には、賞味期限はまだ過ぎていないけれど売ることができないパンなどが、毎日届けられます。それを見ていると、自分たちの生活の豊かさを心配してしまうときがあります。豚のエサにしたうえでさらに余ったものは、結局燃やさないとなりません。ですから、エコフィードを導入してくれる農場をもっと増やさないと、本当の意味で環境に貢献することはできないのです。そこで、もっと「カーボンオフセッとん」の考え方を広げ、エコフィードを導入してくれる農場を増やすために、導入を検討している方の技術相談にのったりもしています。

将来は、自分の農場をもちたいと考えています。エコフィードのような新しい技術や考え方を導入できるような、先進的でおもしろい養豚場にしたいです。また、沖縄県においても、まだエコフィードが導入されている農場は多くないので、自分の農場を沖縄を代表するエコフィード実践農場として発展させていくのもいいな、と思います。

私のように、大学で最新の知識を勉強した人や、新しいものを取り入れるのにためらいのない人がもっと農業に携わるようになってくれたら、農業を通した環境保全がもっと進むのではないかと思います。

CLOSED UP!

福幸豚が食べているのはどんなエサ?

福幸豚が食べているのは、沖縄特有のシークヮーサーやアセロラの加工副産物からつくったオリジナル飼料です。シークヮーサーは沖縄では冬にとれる柑橘の一種として親しまれており、ジュースやお菓子等に加工されています。その加工副産物である種や皮をそのままでは豚は食べず、柑橘独特の香りを消すように試行錯誤を重ねて、豚が食べる飼料にすることができました。福幸豚は、出荷1か月前からこのオリジナル飼料を食べることで、とろけるような甘い脂のお肉となります。今では沖縄県だけでなく、関東や関西のお店でも食べることができます。

福幸豚についてはこちら→ http://fukuyuki.com/

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