子どもの強みを生かす幸せ視点からの大学選び 前編

現代社会は、AI技術の進歩などによって大きく変化し、今後の予測が難しくなっています。従来の常識が通用しないこともある中、これからの社会を生きる子どものためには、どのような視点から大学を選べばいいのでしょうか。ビジネスの第一線で活躍するとともに、大学で経営学を教えている斉藤徹氏に、お話を伺いました。(前編)

株式会社ループス・コミュニケーションズ
代表取締役社長 斉藤 徹氏

1961年生まれ。東京都・私立駒場東邦高校を経て、慶應義塾大学理工学部を卒業。日本IBMでコンピュータ・ソフトの開発などに取り組んだ後、91年に同社から独立・起業。
2016~19年度、学習院大学経済学部経営学科特別客員教授。20年4月、ビジネス・ブレイクスルー大学教授に就任予定。著書は『ソーシャルシフト』(日本経済新聞出版社)、『再起動(リブート)』(ダイヤモンド社)など多数。

人間ならではの資質や強みが重要

保護者の皆さまは、偏差値や知名度、就職率といった基準から、子どもの大学を選ぼうとしていませんか?今後も急激に社会が変化していくと言われる中、そうした考えは、子どもの将来にプラスにはならないかもしれません。

私は、コンピュータやデータ通信などに関わる事業を手がけていますが、テクノロジーの進化は、人間の生活だけではなく、人生観をも大きく変えるものだと実感しています。特に、ブログやSNSなど、ユーザー同士が互いに情報を発信し合い、コミュニケーションを成り立たせるソーシャルメディアの普及によって、人と人とのつながりが大きく広がるとともに、緊密にもなりました。日本では、東日本大震災をきっかけに「絆」の価値が再認識されましたが、そうした意識変化をもたらした要因としては、人々がソーシャルメディアを通して他者とのつながりを実感しやすくなっていたことが大きいと言えるでしょう。

ソーシャルメディアがもたらした社会変化、いわゆるソーシャルシフトは、企業や組織のあり方にも影響を及ぼしています。具体的には、上司が部下に一方的な指示を出すのではなく、社員一人ひとりが対話を重ね、互いの強みを発揮していけるよう、フラットな人間関係が大切にされるようになりました。私自身、常に社員との協働を意識した経営を行っています。テクノロジーの進化は続きますが、多様な他者と向き合い、力を合わせる姿勢は、人間ならではの資質・能力として、今後さらに必要とされていくでしょう。

強みを生かすことが幸福感を高める

個人の強みを生かしやすい環境では、幸せを感じる機会も増えます。というのも、人間は、自分の好きな、得意なことに打ち込む中で、幸福感を高めていくからです(図1)。例えば、趣味に没頭し、時がたつのも忘れたといった経験が、保護者の皆さまにもあるのではないでしょうか。

何を幸せだと感じるかは人によって異なりますが、以前は経済的な豊かさを人生の幸せに結びつける人が多かったように思います。しかし、お金を目標にすると、「達成できないかもしれない」という不安が大きくなり、気が休まる暇さえなくなることも。そもそも、経済大国である日本ですが、「自分は幸せだ」と胸を張って言える人はどれくらいいるのでしょうか。一人ひとりの強みや人間関係のフラット化が進む現代社会では、「お金視点」よりも、自分の好きなことを大切にした「幸せ視点」からの将来設計が、幸せへの近道になります。楽しいことや強みを生かして得られる内発的な幸福感は、お金などがもたらす外発的な幸福感よりも強く、長く続きます。「強み」があり、それを伸ばすことが重要なのです。

子どもの大きな岐路となる大学選びでも楽しみながら強みを伸ばし、将来につなげられるよう、「幸せ視点」に立って子どもの興味・関心を尊重しましょう。