子どもの強みを生かす幸せ視点からの大学選び 後編

現代社会は、AI技術の進歩などによって大きく変化し、今後の予測が難しくなっています。従来の常識が通用しないこともある中、これからの社会を生きる子どものためには、どのような視点から大学を選べばいいのでしょうか。ビジネスの第一線で活躍するとともに、大学で経営学を教えている斉藤徹氏に、お話を伺いました。(後編)

株式会社ループス・コミュニケーションズ
代表取締役社長 斉藤 徹氏

1961年生まれ。東京都・私立駒場東邦高校を経て、慶應義塾大学理工学部を卒業。日本IBMでコンピュータ・ソフトの開発などに取り組んだ後、91年に同社から独立・起業。
2016~19年度、学習院大学経済学部経営学科特別客員教授。20年4月、ビジネス・ブレイクスルー大学教授に就任予定。著書は『ソーシャルシフト』(日本経済新聞出版社)、『再起動(リブート)』(ダイヤモンド社)など多数。

大学で教えることで知った、若者の可能性

私は学習院大学経済学部経営学科で教えていましたが、授業でも「幸せ視点」に立ち、私と学生の双方向のコミュニケーションを大切にしました。例えば、授業ごとにLINEのグループを開設。私から授業の連絡事項を配信したり、授業で活用するアンケート調査を行ったりする一方、学生には、授業についての質問はもちろん、授業と関係がなくても、気がかりなことがあれば連絡してほしいと呼びかけました。また、教員になった当初は、「Z世代」の学生の実態を知りたいと、学生にアドバイスを求めたこともあります。

毎回の授業では、私が一方的に話すのではなく、学生一人ひとりが主体的に考えることを心がけ、学生同士が授業内容について対話をする場面などを積極的に設けました。また、学生が学びを自分事としてとらえられるよう、コメントシートを書いてもらい、多くの学生の参考になるようなコメントは、次回の授業で紹介しました。

次第にさまざまな学年の学生が集まる自主ゼミが生まれました。ゼミ生同士は社会的な課題を設定し、対話をしながら、解決策を練りました。学生が互いの強みを生かし、新しい価値を創造する場にできたと実感しています。実際、ゼミの中心メンバー数人は、株式会社「dot」を設立して起業しました。「好き」を強みにして起業した「dot」。社員は楽しみながらアイデアを出し合い、クライアントとコラボしながら事業を展開。その結果、きちんと収益を上げ、成功しているのです。

教員と学生、学生同士のコミュニケーションを重視した学びは、学生の強みを伸ばせます。また、かつての大学で一般的だった「教員の話を聞くだけ」の授業ではなく、学生がアクティブに取り組める授業を実践している大学も少なくありません。学生と教員がフラットな関係でお互いに学び合う。これが今、現実に大学で起こっているのです。このような学びの環境があることは、「幸せ視点」からの大学選びにおける最重要ポイントの一つです。

大学の授業のリアルな情報は卒業生に聞こう

大学でどのような学びが行われているのかを判断するには、大学の雰囲気を肌で感じられるオープンキャンパスに参加するといいと思います。その一環として、模擬授業や研究室の見学ツアーなどを実施している大学もあります。気になる大学のオープンキャンパスにはぜひ参加するよう、子どもに声をかけましょう。

ただ、模擬授業と実際の授業では違いがあることも。そこで、普段から学生と向き合い、「幸せ視点」に立った、強みを伸ばす授業をしている教員が多いかどうかを知ることが肝心です。それには、その大学・学部の学生や卒業生に聞くのがベストです。例えば、オープンキャンパスで在学生に直接聞いたり、子どもの高校の先生に志望校に進学した卒業生を紹介してもらうという方法も。また、卒業生のSNSを見たり、口コミを参考にするのもZ世代らしいでしょう。授業の進め方は教員次第なので、個々の教員についてのリアルな情報収集が重要になります。

志望大学・学部を決めるにあたっては、話し合いが大切になりますが、保護者と子どもの考えが違うのは当然のことです。保護者の思いを伝えるとともに、子どもの希望にしっかり耳を傾けることによって、両者にとってよりよい考えが生まれることもたくさんあります。そうした建設的なコミュニケーションを図るうえで参考になるのは、発達心理学がベースにある「親業」のスキルです。

大学で何の学問を学びたいのか、社会で何がやりたいのかは、あくまでも子ども自身が決めること。保護者の方は、子どもが興味・関心を持っている分野に進めるよう支援することが大切です。人間は、得意な、好きな分野に取り組む中で、強みを生かし、幸福感を何倍にも膨らませていきます。子どもの幸せは、保護者の幸せです。子どもの強みを生かせるよう、その力を信じ、「幸せ視点」からのサポートを心がけましょう。