高校の調査書が大きく変わる 
高校時代の様々な活動を大学入試が評価する時代に
~「多面的・総合的な評価」の導入~

2017.09.28

今回の大学入試改革では、大学側は入試での生徒評価の資料として、高校から提出された調査書の内容を重視するという方針が打ち出されています。調査書とは、高校が生徒の各教科の評定や特別活動の記録を記載した表裏の両面1枚の書類ですが、この調査書に関心を持っている生徒や保護者の方は多くないように思います。

マナビジョンで5月17日に発信をした「入試改革の方向性は?高校での学びはどう変わるのか?」でご紹介したように、今後は、どのような入試形式であっても「学力の3要素」を問うていく検討が進んでいます。

これを実現するためには、従来の教科学力を問う試験だけではなく、受験生を「多面的・総合的」に評価することが必要です。そのために、入試改革の一環の中で高校の調査書は大きく改訂され、入試本番で大きな役割を持とうとしています。調査書の改訂と「多面的・総合的評価」とはどのようなものかを考察します。

表裏の両面1枚という制限は撤廃

現在の調査書には裏面に、学年ごとに記入する【指導上参考となる諸事項】という欄があります。今回の改訂方針の一つは、そこに下記1~6を項目ごとに記載できるように変更して、高校時代の諸活動について、多様で具体的な内容が記載できるようにする、というものです。

項目

  1. 各教科・科目及び総合的な学習の時間の学習における特徴等
  2. 行動の特徴、特技等
  3. 部活動、ボランティア活動、留学・海外経験等
  4. 取得資格・検定等
  5. 表彰・顕彰等の記録
  6. その他

方針では加えて、活動事例や取得資格を単に記入するのではなく、例えばボランティアであれば具体的な取り組み内容や期間、生徒が自らかかわってきた活動なのか、そして、生徒の成長の状況にかかわる所見も記載するよう求めています。これは、様々な取り組みや、資格取得に向けた活動を通じて、生徒がどのように変容・成長したのかを記入するということです。調査書の記述量は従来のものより増えますから、表裏の両面1枚という制限は撤廃されることになりました。

調査書を大学はどう使うのか

大学入試の実施要項では「調査書を十分に活用」するように、今も記載はされていますが、今後は各大学の入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー:AP)に基づき、調査書や志願者本人の記載する資料を「どのように」活用するのかを、各大学が募集要項に明記することになります。おそらく、大学側は受験生に対し入学段階で求める力(資質・能力)を示すとともに、それらを高校時代のどのような活動で身につけ、どこまでのレベルに上げたのかを調査書で確認することになるでしょう。

従来のAO入試や推薦入試では、多くの大学が調査書とは別に志望理由書の提出、もしくは面接でそれらを測ってきましたが、今後は一般入試でも同様なことが調査書を通じて行われることになります。これは、「学力の3要素」の一つ「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を評価することにつながっているのです。

高校での活動履歴 どう残していくべきか

高校1年生からの活動を記録・保管しながら、大学出願時にそれらを調査書に記載して提出する。今までどおり、調査書を紙ベースで運用していくとすれば、高校教員に相当な負担を強いることになるのは容易に想像がつきます。そこで、文部科学省は「大学入学者選抜改革推進委託事業」で、高校段階でのeポートフォリオ(*)とインターネットによる出願を連動させたシステムモデルの研究を大学とともに進めています。
*生徒の日々の学習成果(レポートやプリント、制作物なども含む)や活動の記録を電子化して蓄積したもの。

文部科学省での研究が進むなか、すでにICTを使い、高校の活動履歴を蓄積・活用しようとする高校が増えています。「生徒の活動履歴を蓄積し、指導の充実と大学入試に活用」している愛知県・私立滝中学・高等学校の事例(別ウィンドウで開きます)をご参照いただくと、どのようなものかがご理解いただけると思います。

なお、滝中学・高等学校は、Classi株式会社(2014年4月に設立された株式会社ベネッセコーポレーションとソフトバンク株式会社の合弁会社)が提供する、あらゆる学習活動をサポートするプラットフォーム「Classi」(*)を利用しています。「Classi(別ウィンドウで開きます)」は、学校教育でのICT活用を総合的に支援するクラウドサービスで、多くの機能がありますが、その一つの「生徒カルテ」を使い、学校は活動履歴を蓄積しています。
*Classi有料版・生徒ユーザー数(高校・中高一貫校)は2000校以上 77万人(2017年8月現在)となっています。

なぜ、調査書を改訂するのかを考えたい

ここで、改めて考えたいのは、なぜ調査書を改訂するのかということです。高校時代の様々な活動を評価する、ということは高校時代に多くのことに主体的に取り組んでほしい、高校生活を充実させてほしいというメッセージと言えます。そして、活動の履歴を蓄積することは、生徒が自分の取り組みや歩みを振り返り、自分の将来を考えるきっかけとなるはずです。多くのことにチャレンジするお子様を、保護者の皆さんと一緒に私たちも応援していきます。

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