高校生の心理と保護者のかかわり方 高校時代の親子関係を考える

子どもでも大人でもない、「高校生」という時期。 保護者は子どもをどのように理解し、どう向き合えばいいのでしょうか? そのヒントを探ります。

高校時代の親子関係を考える

高校の3年間は、子どもの人生にとってどのような意味を持つのでしょうか?
また、保護者はどのように子どもとかかわっていけばいいのでしょうか?

精神的な「自立」に向かう3年間

13歳~18歳ごろの中学・高校時代は、発達心理学では「青年期」と言われる時期にあたり、「自分はどんな人間なのか?」「将来、何をやりたいのか?」「自分は何者なのか?」を考える、「自分探し」の時期です。

子どもによっても異なりますが、中学時代は一般的に第二次反抗期とも呼ばれ、自分自身の価値観を作り上げるため、子どもはいったん保護者の考え方や言うことを否定したり、社会の常識を疑ったりするものです。ところが、大人に近づいてくると、徐々に保護者と自分との考え方の違いを客観的にとらえ、一人の人間として向き合えるようになってきます。小学・中学生のころに比べて、高校生になった子どもが「どんどん離れていく感じがする」という保護者も多いことでしょう。

しかし、子育てのゴールが、「保護者がいなくても自分自身の力で考え、歩んでいける」、つまり「自立すること」にあるとすれば、幼いころに比べると保護者との距離が生まれ、その距離が広がっていくのが当たり前の姿と言えます。

保護者に依存する子どもが増加!?

一方で、近年は、いわゆる「反抗期」が消失し、「友達親子」という言葉に代表されるような、距離感の近い親子も増えていると言われています。

「友達関係のような親子関係」が悪いものとは一概に言えませんが、子どもが自立していく過程では、保護者への依存度は徐々に下がっていくことが自然であると言えます。しかし、近年の調査結果を見ると、むしろ「保護者への依存」が増している傾向にあるようです。

保護者との関係(経年比較)

例えば「困ったことがあると、保護者が助けてくれる」と考えている子どもが2012年調査では約半数を占めるなど、2008年調査よりも2012年調査の方が保護者への依存度が増していることがわかる。

出典:ベネッセ教育総合研究所「第2回 大学生の学習・生活実態調査報告書」(2012年)

注1)*の項目は2008年調査ではたずねていない。
注2)サンプル数は、2008年4,070名、2012年4,911名。

「ヘリコプター・ペアレント」という言葉をご存知でしょうか? 本来、大人として扱うべき年ごろになっても、保護者が子どもの頭上をヘリコプターのようにホバリングして待機しており、なんらかの問題が起きるとヘリコプターが着地するかのごとく降りてきて、子どもの人生に介入してくる保護者のことを指しています。

これは、1990年にアメリカ人医師のフォスター・クライン氏が、自らの著書の中で使ったのが最初と言われている言葉ですが、日本でも、このような保護者が増えているのかもしれません。

子どもが「自立」を獲得していこうとしているこの時期、ヘリコプター・ペアレントのようなかかわり方は望ましいとは言えないでしょう。では、保護者はどのような態度で子どもに接していけばいいのでしょうか?

親子ともども「メタ認知能力」を高めることが大切

高校生のこの時期、子どもへの接し方のヒントとなるキーワードが「メタ認知能力」です。メタ認知能力とは、簡単に言えば「自分自身の思考や行動を客観的に把握する力」のことで、近年、教育の現場で重要性が叫ばれています。

メタ認知能力が高い子どもは、例えば、受験勉強においても自らの現在の実力を過大評価も過小評価もせずに、客観的に認識することができます。そして、ゴールとなる志望校の合格に求められる力や、入試までに残された時間を鑑みて、適切な学習計画を立てて実行することができます。つまり、メタ認知能力は「こうありたい」と思う人生に近づく力、とも言えるでしょう。

メタ認知能力は、まずは「自分自身の思考」を知ることから始まります。そのためには、日常のコミュニケーションにおいても、子どもに対して「あなたはどう思う?」「どうしたらいいと思う?」と、常に子どもに考えさせ、判断させる声かけや、働きかけを心がけるといいでしょう。

保護者もまた同様に、「私は子どもにかかわりすぎていないだろうか?」「放任しすぎていないだろうか?」と自問自答する姿勢が大切です。保護者自身もメタ認知能力を高めていくことで、ヘリコプター・ペアレントに代表されるような「過干渉」や、逆に、子どもとの距離を取りすぎる「放任」になることを防ぐことができます。

子どものメタ認知能力を高める声かけ例

「私の意見は~なんだけれど、あなたはどう思う?」
「あなたは、今の状況をどういうふうにとらえている?」

監修/木村治生(ベネッセ教育総合研究所・初等中等教育研究室長)

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