入試親世代との仕組みの違いをチェック

2020年度大学入試改革情報

入試改革の方向性は? 高校での学びはどう変わるのか?

5月16日に文部科学省から、①高等学校教育改革、②大学入学者選抜改革、③大学教育改革の検討状況をまとめた「高大接続改革の進捗状況について」が発表されました。①では、高校生の基礎学力定着を目指すための「高校生のための学びの基礎診断(仮称)」が、そして②では、現行の大学入試センター試験に替わる「大学入学共通テスト(仮称)」(現・中学3年生が受験する2020年度入試から開始)の導入が予定されています。

これから大学入試はどのように変わるのでしょうか。そして、大学入試が変われば、高校での「学び」や「学び方」も変わるはずです。さらに、高校教育の変化は時間を置かずに、中学校、小学校へも影響を与えていくことになります。大学入試改革によって「今後の学校教育はどのように変わるのか」といった点も含めて、発表内容を整理してみたいと思います。

「高校生のための学びの基礎診断(仮称)」はなぜ必要なのか

近年、義務教育の学習内容が未定着なままで高校に入学する生徒が増加していると言われています。そのような生徒の多くが、「高校入学後、授業の内容を理解できず、勉強に対する意欲が持てない。だから、ますます授業が分からなくなる」といった負のスパイラルに陥っているようです。

もちろん、そのような状態のまま高校生活を過ごすのは問題です。「今後10年~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高い」(オックスフォード大学准教授 マイケル・オズボーン氏)といった予測もあるように、今後、社会環境は速く、大きく変化していくと考えられています。その変化に対応していくためには「自分で解決策や答えをつくり出せる力」が必要であり、そのためにもすべての高校生が高校卒業時に一定の基礎学力を身に着けていることが求められます。

では、義務教育範囲が未定着な高校生もいる中で、基礎学力を身に着けさせるためにはどうすればよいのでしょうか。文部科学省は、まずは高校で義務教育範囲の学び直しを含めた学習指導を行い、「勉強したら問題が解けた」「もっとやってみたい」といった学びに向かう意欲を高めることが重要だと考えています。そして、高校生が継続的に学びに向かう状態にし、教科学力の定着や思考力・判断力・表現力の育成につなげていく。文部科学省は、各高校での学びの場にそのようなサイクルをつくりたいと考えており、そのサイクル実現のための方策として「高校生のための学びの基礎診断(仮称)」の実施が検討されているのです。

これからの社会で必要とされる能力を踏まえ、大学進学希望者に限らず、すべての高校生の学習意欲の喚起と基礎学力定着に向けた試みが「高校生のための学びの基礎診断(仮称)」であるというわけです。

この「高校生のための学びの基礎診断(仮称)」は、文部科学省が一定の要件を示し、それに即した民間事業者の各種試験・アセスメントを「高校生のための学びの基礎診断(仮称)」の1つとして認定するという仕組みでの運用が検討されており、2019年度から国語・数学・英語(4技能)での実施を予定しています。

「私の高校卒業後の希望進路には基礎学力は必要ない」といった発想ではなく、今後の社会で必要になる能力も見据えて、高校生には日々の学習に取り組んでもらいたいですね。

「大学入学共通テスト(仮称)」は記述式問題を導入、英語は民間の資格・検定試験を活用

2020年度から始まる「大学入学共通テスト(仮称)」は、現在の大学入試センター試験の後継の試験として検討されています。受験者数が50万人以上という大規模な試験の改革を行おうとしていることからも、文部科学省の教育改革実現に向けた強い意欲を感じます。

このテストの目的は、大学入試センター試験と同様に、大学教育を受けるために必要な能力の測定となります。目的は同じですが、「大学入学共通テスト(仮称)」では2つの大きな改革が検討されています。

まず、改革の1点目が「大学入学共通テスト(仮称)」での国語と数学における記述式問題の導入です。「大学入学共通テスト(仮称)」では、受験者の思考力・判断力・表現力をより深く問う方向で検討されており、その実現のために、国語と数学で記述式問題の導入を検討しています。思考力・判断力はマークシート式の出題でもある程度は測れますが、表現力を測るためには、記述式の問題が必要だと考えられているのです。

国語は80~120字程度の問題を含め、3問程度の出題が検討されています。国公立大学の国語の個別学力検査では80~150字程度の問題が出題されていますので(ベネッセコーポレーションの調査による)、この記述量は受験者の表現力を測るには十分な文字数と言えそうです。

改革の2点目は英語を4技能で測定するという点です。現在の大学入試センター試験では、英語は「読む」「聞く」の2技能を測定していますが、2020年度からの「大学入学共通テスト(仮称)」では、英語は「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能の力を見ていく方向で検討されています。

ただ、現在の大学入試センター試験の英語は50万人以上が受験しています。それだけ多くの受験者がいる入試で、どのようにして英語4技能を測る試験を行うのでしょうか。その点については、文部科学省は民間事業者が実施する資格・検定試験の活用を検討しています。

GTEC(2016年度の中高生受験者数が約93万人の、スコア型としては全国最大規模のベネッセコーポレーションの英語検定)などの民間事業者が実施する資格・検定試験の中から、大学入試センターが認定試験を選定し、受験生はその認定試験の結果を使って大学入試に臨むという仕組みが検討されています。資格・検定試験(認定試験)は高校3年生の4~12月の間に2回受験でき、高成績の試験結果を使うことが可能で、各認定試験の結果とCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠の略称)の6段階評価が大学に提供されます。

以上のように、大学入試センター試験の後継テストでは、思考力・判断力・表現力を見るための国語と数学での記述式問題導入と、英語4技能実施が検討されています。この数年で大変大きく大学入試の仕組みが変わろうとしているわけです。


では、この2つの大きな改革は教育現場にどのような変化をもたらすのでしょうか。

まず、「国語と数学での記述式問題の導入」がもたらす変化についてです。多くの学校が知識・技能の習得に加えて、思考力・判断力・表現力の育成を目指し、低学年段階から「アクティブ・ラーニング」と呼ばれる、生徒同士での主体的、対話的な学びを授業の中に組み入れ、より深い思考や理解の実現を目指す授業改革が進むと考えられます。実際に、アクティブ・ラーニングを実践している高校も増えています。保護者の皆さんが高校生だった頃の授業とは、先生の教え方も生徒の学び方も変わっていくはずです。

次に「英語」です。これからの英語教育のキーワードは「4技能の育成と評価」と言えます。大学入試で求められる英語の力が4技能になることで、高校の英語教育も「話す」技能も含めた、4技能での指導と評価がさらに活発になると思われます。

ただ、英語4技能での指導と評価の活性化は高校段階に限った話ではありません。2020年度から小学校でスタートする次期学習指導要領では、小学校3・4年生に外国語活動が導入され、小学校5・6年生では英語が教科化されます。また、2020年度よりも前に小学校、中学校で英語4技能育成と評価に取り組む自治体がここ数年で増えてきました。例えば、群馬県のある自治体では、小・中学校3校で小5~中3全員が年に5回から10回、インターネット経由で外国人の指導を受けるベネッセコーポレーションのオンライン英会話授業を導入しました。このように、大学入試改革や今後のグローバル化社会に向け、英語4技能の育成と評価は、教育現場で待ったなしで進行していくでしょう。さらには、大学入試に続き、私立高校や公立高校の入試でも、英語は4技能の力を測ろうといった動きが出てくるかもしれません。

また、学校だけではなく、家庭での英語学習も変化していくことが予測されます。学校での英語教育、家庭での英語学習がどのように変化していくのか。英語教育の動向には目が離せません。

入試の方式を問わず、「学力3要素」が求められることに

最後に、各大学が行うAO入試、推薦入試、個別学力検査の改革ポイントに触れておきます。

最近「学力の3要素」という言葉を耳にしますが、「学力の3要素」とは何なのでしょうか。「学力の3要素」とは、学校教育基本法の第30条で規定されているもので、以下の3点が「学力の3要素」とされています。

(1)基礎的・基本的な知識・技能
(2)知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等
(3)主体的に学習に取り組む態度

現在、この「学力の3要素」をすべての大学入試方式で問うていこうという検討が進められています。
例えば、AO入試や推薦入試を考えてみると、そもそもAO入試や推薦入試は、文部科学省が規定した大学入試実施要項で「原則として学力検査を免除」となっています。そのため、一部の私立大学を中心に定員確保のために、事実上の学力不問の試験になっているということや、3年生の2学期に生徒に合格通知が出されるので、その後の学習意欲に影響が出ることなどが指摘されていました。

そこで、AO入試や推薦入試でも、知識・技能及び思考力・判断力・表現力を問うように、実施要項の見直しが進んでいます。具体的には、高校から提出される調査書などの出願書類に加えて、小論文やプレゼンテーション、口頭試問など各大学で何らかの評価を実施するか、「大学入学共通テスト(仮称)」を活用することが検討されています。つまり、大学進学を目指す高校生は、どのような入試を選んでも何らかの形で学力試験が課されることになるわけです。

その一方で、一般入試と言われている個別学力検査は、現在は教科の記述学力を測る問題を中心に構成されていますが、より解答の自由度の高い記述式や小論文の導入が検討されています。また、学力のみで合否判定を行っているため、受験時だけではなく、大学入学後にも必要とされる学習態度や学びに向かう意欲については分からないという課題がありました。

そこで各大学で実施される個別学力検査でも、学校が作成する調査書や、志願者本人が高校での学びの記録(留学経験やボランティア活動、各種資格・検定)を記載した資料を活用するなどして、学習に取り組む態度や意欲など、受験者を多面的に評価していくことが検討されています。

今後、高校での教科の学習成果だけではなく、学校行事や部活動への取り組み、そのほかの様々なチャレンジを大学が評価指標の一つにしていきます。保護者の皆さんは、お子さんが積極的な高校生活を送れるよう、ぜひ後押しをしてあげてください。


最後に、現在検討されている教育改革は、今後の社会で活躍し続けられる生徒の育成を目的としています。保護者の皆さんが、国が進める教育改革に関心を持て、その方向性を理解できるよう、ベネッセコーポレーションでは継続的に情報を発信していく予定ですので、どうぞご期待ください。

2020年度大学入試改革情報  ポイントまとめ

① これからの社会で活躍していくためには一定水準以上の基礎学力が求められる
② 教科学力の定着を通して、思考力・判断力・表現力を身に着けることが必要
③ 小・中・高、どの学齢においても英語教育は4技能での育成と評価が進む
④ 大学入試はどのような入試方式を選択しても「教科学力」が問われていく
⑤ 教科学力以外にも、部活動や課外の取り組みなど、学校生活全体を充実したものにすることが大切

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