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2018年4月、横浜市立大学に学部新設予定 ビッグデータ時代に注目の学問「データサイエンス」とは?

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  • 2017.08.15

モノとモノとがつながる IoT(*)や人工知能の発達による第4次産業革命の結果、今後なくなる職業が多くあると言われる中、ますます重要性が高まっているのが、「データサイエンス」のスペシャリストだ。IoT から日々蓄積される膨大なデータの中から、必要なデータを見分け、結びつけて分析し、社会課題の解決や新たな価値の創造に生かしていく人材の育成が期待されている。データサイエンスを学ぶ学部を新設する横浜市立大学と、業務にデータを活用する企業に、データサイエンスの学問内容や求められる力などについて聞いた。

*Internet of Thingsの略。スマートフォンやパソコンだけでなく、様々な物に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり、相互に通信したりして、自動制御や情報収集などを行うこと。

登場人物紹介

  • 窪田吉信 くぼた・よしのぶ

    横浜市立大学 学長
    横浜市立大学附属病院副病院長、学術院医学群長、副学長等を経て、2014年4月から現職。医学博士、専門分野は泌尿器科学。

  • 岩崎学 いわさき・まなぶ

    横浜市立大学 国際総合科学群 教授
    データサイエンス推進センター センター長
    茨城大学助手、防衛大学校助教授、成蹊大学教授等を経て、2017年4月から現職。理学博士。研究分野は、統計的データ解析の方法論と応用。日本統計学会会長。

  • 山中竹春 やまなか・たけはる

    横浜市立大学 医学部臨床統計学 教授
    データサイエンス推進センター 副センター長
    米国国立衛生研究所(NIH)、国立がん研究センター部長等を経て、2014年4月、横浜市立大学へ。理学博士。研究分野は、医学研究の計画や解析に関する統計的方法論の開発。

ICTの発展とともに活用の気運が高まる

「第4次産業革命」と言われる現代では、社会の隅々までネットワークが行き渡り、多種多様な情報がデータ化され、蓄積され続けている。それは、数値で表される情報だけではない。SNSに書き込まれた文章、医療現場において内視鏡で撮影した画像、GPSで分かる移動経路など、すべての情報がデジタル化され、コンピューターに取り込まれている。

「データサイエンス」は、それらのデータを分析し、問題点を見つけて解決策に結びつけたり、未来の動きを予測し、その対応に役立てたりといったように、課題解決や新たな価値の創造に生かしていくための知識・技能を身につけ、研究する学問だ。

2018年4月に首都圏初の「データサイエンス学部」を新設する横浜市立大学の窪田吉信学長は、こう説明する。

窪田学長:今まで目に見えなかった情報も、ICTの進化によってデータ化され、大量に蓄積できるようになったことで、それらを活用しようという気運がここ数年で急速に高まりました。データサイエンスは、今まさに社会に必要とされ、今後も発展していく領域だと捉えています。

政策や公共サービスにも活用されるデータ分析

データサイエンスの活用の場と求められる人材

ICT、IoT の発達
ユーザーや事象の履歴情報の蓄積

商品購入、HP閲覧、学習状況、自動車走行、電子カルテ、天気、自然災害、交通事故などの履歴情報

SNSなどでユーザーが発信した情報の蓄積

ツイッター、インスタグラム、フェイスブック、ユーチューブなどによるテキスト、画像、動画、音声などの発信情報

  • 様々なデータを組み合わせたニーズ分析による課題の顕在化
  • ビッグデータの分析による動向や危険の予測などが、企業、自治体等に広まる
分野を問わず、データを分析して、問題の構造や要因の解明、解決策の提示を行う人材が求められるように

データを駆使して論理的に考え、社会の課題を見いだし、解決する力

社会にイノベーションを起こすためのアイデアを提案する力

コミュニケーションを大切にしながら、人や社会に貢献する力

※横浜市立大学提供資料、取材を基に編集部で作成

データサイエンスのニーズ拡大は、従来からマーケティングなどでデータを活用していた企業だけの動きではない。データサイエンス推進センター長の岩崎学教授は、その広がりを次のように語る。

岩崎教授:データは国民の共有財産であるとして、官庁や自治体におけるオープンデータ化が進められています。それらのデータは、政策や公共サービスの立案・改善に活用されています。データサイエンスの専門知識は、企業の営利目的にとどまらず、社会課題の解決にも求められているのです。

例えば、医療統計学が専門の山中竹春教授は、自治体から救急医療に関するデータ分析の相談を受けたことがあると言う。

山中教授:大きな自治体では、救急車の出動件数は年間十数万件に上ります。それらの出動時刻、消防署から目的地まで、また目的地から病院までの経 路と所要時間などのデータを記録し、分析すれば、救急車のニーズ予測を立てることが可能です。救急車の適切な台数と配置場所を割り出すことで、よりよい救急医療に結びつけることもできます。

データサイエンスの重要度の高まりは世界的な動きであり、各国の教育もそれに対応している。岩崎教授が視察に訪れたアメリカの大学では、学生全員がデータサイエンスの基礎を履修する仕組みになっていたと言う。

岩崎教授:欧米では、データサイエンスを専門に扱う学部があるだけでなく、どの分野に進む学生にも必要な知識として学ぶようになりつつあります。グローバル社会で海外の人々と伍していくためには、日本だけが遅れを取るわけにはいきません。データサイエンスの教育の普及は急務です。

現場と連携したPBLで実践的な力を身につける

データサイエンスでは、データに真実を語らせるために統計学や計算機科学の基礎知識が必要となるが、それ以上に重要なのはイノベーションを起こす発想力や他者と協働できるコミュニケーション力であり、社会への課題意識や新しい価値を生み出したいという意欲が求められると、山中教授は強調する。

山中教授:データサイエンスはデータを使って課題を解決する実学であり、そのデータを生み出しているのは「社会」です。社会を相手にする学問ですから、文系・理系というくくりで捉えず、その枠組みを超えて学ぶことが重要だと考えています。

新設学部のカリキュラムの中心には、企業、自治体、大学病院等と連携したPBL(*)を予定している。

*Problem Based Learningの略。課題解決型学習のこと。

首都圏の経済・産業活動のダイナミズムから生まれるビッグデータ、人口約370万人の横浜市から生まれるオープンデータなどの貴重な環境があり、その地の利を生かした実践的な学びを進めていきたいと言う。

山中教授:企業や自治体などから提供していただいた実際のデータを用いて、提供元と協働しながら課題解決に取り組んでいくような実践的な学びが重要だと考えています。現場で学ぶ中で、自分に必要な知識やスキルも見えてきますし、様々な人とのコミュニケーション力も磨かれていくでしょう。

データサイエンスは社会の課題と向き合う学問であり、そのためには、社会の様々なことに興味・関心を持つことが大切だと、岩崎教授は語る。

岩崎教授:データサイエンスの入り口となる学びは、小学校であれば夏休みの自由研究、中学校や高校では社会科の調査や理科の実験で、多くの生徒が経験しているはずです。数値や情報を活用して、課題を論理的に解決していく面白さを感じた生徒に、ぜひデータサイエンスを学んでもらい、その成果を社会で生かしていってほしいと思います。

※この記事は、ベネッセ教育総合研究所 『VIEW21』高校版 2017年度6月号より引用しています。

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