
ポイ捨てを減らし、ポイントを稼ぐ【設定した立場】高校教師
大島高校2年生 F.Hさん
- 細田先生からのコメント
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「ポイ捨て撲滅運動会」の実施という提案はとてもおもしろいですね。行動の動機付けとしてポイントが与えられるというアイデアはそれほど珍しくないのですが、金銭ではなく「体育祭の得点に加算」というのは斬新です。また、自分の居住地での生活に密着した問題として考えられているため、切実感と親近感があるだけでなく、提案が非常に具体的で実現可能なものとなっている点も高く評価できます。
文章面でも、冒頭で「なぜ納得いかないのだろう?」と思わせて、そこから短い文章でたたみかけていく書き出しが魅力的です。全体にリズムのよい文章でとてもうまくまとめられています。ただ一つ惜しかったのは最後の一文。「自らの手で街の美化に貢献していきたい」というのは締めの言葉としては月並みです。ここで一工夫できれば素晴らしい小論文となっていたでしょう。
ごみを出さない配達【設定した立場】大手通販サイト運営会社CEO
日本航空高校2年生 K.Nさん
- 細田先生からのコメント
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ダンボールの買取のコストを新品のダンボール価格で帳尻を合わせてリユースを進めるというアイデアは、現実的にうまくいくかどうかは別として理屈は通っています。高校生なりに経済的な動機付けが論理的に考えられており、非常に評価できます。第1、第2段落でダンボール配送のメリットとデメリットもうまくまとめられており、とてもよい導入となっています。
ただ、通販サイト運営会社がこの提案を実行する動機付けがやや弱いという印象が残ります。通販サイト運営会社にはどのようなメリットがあるのか、よりはっきりと示すべきでしょう。また、最終段落も単に要約となっているのは残念。例えば、コロナ禍により通信販売が激増している状況に触れるなど、パンチのある文章で締めることができればより魅力的な小論文となります。
環境に配慮した地熱発電の提案【設定した立場】温泉地の市長
成城学園高校3年生 N.Oさん
- 細田先生からのコメント
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「スチームパンクな世界観を作り観光スポットにする」というアイデアは非常におもしろいですね。高校生だからこそ考えつく斬新な発想と言えます。実際に工場夜景は人気となっているので、実現可能性は十分あります。文章面でも、重要なところで「22.4パーセント」「0.25パーセント」などの数字をうまく配置しているため、具体的でわかりやすい内容となっています。また、地熱発電への反対論を挙げたうえできちんとそれに反論している点も論の説得力を高めています。
惜しかったのは、第1段落の他の再生可能エネルギーのデメリットに字数を割きすぎてしまっている点です。ここはもう少し短くまとめたうえで、本論の説明に字数を割きましょう。また、現実に地熱発電があまり普及していない現状をどうすれば打破できるかという点についても言及できればより現実的な提案となるでしょう。
フードロス削減と子供の欠食を防ぐプランの提案【設定した立場】フードロスを減らす取り組みを行うNPO団体の代表の立場
天王寺高校2年生 Y.Nさん
- 細田先生からのコメント
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第1段落の「日本の食品ロス約522万トン」に対して「飢餓に苦しむ人々への食糧の援助は年間約420万トン」という対比は問題点を明示するよい導入です。また、学校で朝食を提供するという提案が本当に実現可能なのか、コストはどうするのかといった疑問に、あらかじめ実例を挙げるなどして具体的に説明しているため、非常に筋の通った説得力ある論となっています。
ただ、既に実例がある分、この提案の独自性をよりはっきりと示す必要があります。例えば、現状ではあまり行われていないこの提案を広く普及する方法などに言及できれば独自性が出るでしょう。また、最後の一文は単にここまでの論を要約するだけでなく、もう一工夫ほしいところです。なお、小論文のように自分や相手の立場を考える必要のない、より客観的・簡潔な文章では、通常「だ、である」を使った方が良いでしょう。
キノコで変える地球の未来【設定した立場】環境保全に取り組むNPO法人の職員
駒込高校1年生 M.Uさん
- 細田先生からのコメント
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冒頭からプラスチック問題の現状について、無駄のない短い文章で畳みかけており、とてもうまい書き出しです。全体に文章の運びがとてもうまくて、内容に引き込まれます。キノコにプラスチックを分解させるというアイデアもユニークですし、環境教育につなげるという発想も秀逸です。
ただ、実際にどの程度の量のプラスチックをキノコが分解できるのかがわからないため、それがどうプラスチック問題を解決に導くのか曖昧なのは残念。環境教育を行うというだけでは、プラスチック問題を解決するための提案としてやや物足りない印象です。具体的にどのようなシチュエーションでどのようにキノコにプラスチックを分解させるのかというキノコの使い方をより詳細に考えて提案できると、現実的な提案となります。
カフェチェーンの使い捨てカップ削減【設定した立場】大手カフェチェーンの経営企画担当者
成城学園高校3年生 S.Oさん
- 細田先生からのコメント
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第1段落で「年間3億個」「一日当たり100万個」という具体的な数字を示すことで、読み手に「これは大変な問題だ」と思わせるよい書き出しとなっています。カップの原料を紙に変えても使い捨てであることに変わりないと一刀両断しているのも非常に歯切れのよい印象です。レジ袋有料化の事例を挙げたことで、価格設定の変更の有効性を印象付けることにも成功しています。
ただ、「使い捨てを選択するとお金がかかる」形にすることで、人々の行動変容を図るアナウンスメント効果を期待するというのがこの提案の肝なのですが、ややわかりづらい印象です。単に金額の変化だけではなく、レジ袋有料化と同様に「お金がかかるのはよくない」と思いがちな日本人の気持ちに訴えることで、効果が見込めることを明快に表現することができれば、さらに説得力が高まるでしょう。
お弁当容器のプラスチック削減【設定した立場】スーパーマーケットの店長
暁星国際高校1年生 Y.Hさん
- 細田先生からのコメント
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「毎週クレジットカード1枚分のプラスチック」というインパクトのある表現を冒頭に持ってきたのはいいですね。こうした具体的な表現を使った書き出しはとても効果的です。お弁当の容器をリユース容器に変えるという提案も、生活に密着した地に足の付いたアイデアで好感が持てます。ポイント制という経済的動機付けをきちんと考えている点も評価できます。
ただ、こうしたリユース容器を使った量り売りは少数ですが既に実施されています。それを踏まえたうえで、より広く普及するにはどうすればよいのかを論じることができれば説得力ある内容となるでしょう。また、1行のみの段落があるなど段落のバランスの悪さが目立つので、その点も改めると論理の流れがわかりやすくなります。
食品ロスと電力不足の同時解決を図る【設定した立場】食品販売会社社長
天王寺高校2年生 A.Oさん
- 細田先生からのコメント
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食品ロスと電力不足をつなげて解決法を考えるという発想はとてもおもしろいですね。香川県で行われているうどん発電を実例として挙げ、実現可能な提案であることを印象付けている点も高く評価できます。配送については既に実施されているかどうか言及がないのは少しマイナスですが、きちんと考えられています。
しかし、食品ロスを解決するには捨てられる食品を減らすことが必要ですから、厳密に言えばこの提案は食品ロスの解決ではありません。その点は表現の仕方を変える必要があるでしょう。第1段落の「平成27年度に年間646万トン」というデータはやや古い印象なのも気になります。できるだけ新しいデータを使いましょう。また、最初と最後の段落に比べ真ん中の段落のみ長すぎるので、最終段落をもう少し充実させるなどバランスを整えるといいでしょう。
地球温暖化について【設定した立場】環境大臣
大島高校2年生 R.Tさん
- 細田先生からのコメント
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自動車の代わりに自転車を使用することで二酸化炭素を削減するというのは素直で自然なアイデアで共感できます。自転車の使用を促進するために、専用アプリによるポイント制を導入して経済的な動機付けを行うというのも、実現性の高い提案と言えるでしょう。
ただ、レンタサイクルや、専用アプリによるポイント付加は既に実用化されつつあります。自らの提案内容がこれらとどう違うのか、もしくはどうすればより普及するのかについて言及したいところです。例えば、第1、第2段落の温暖化についてのやや冗長な説明を短くまとめたうえで、環境大臣という立場を活用して自転車の活用促進につながる施設を設置するといった独自の案を述べるといいでしょう。また、最後の一文が地球温暖化を扱う全ての場合で使える月並みな内容なのも残念。締めの一文はもう一工夫しましょう。
ミルクカートン傘使用によるプラスチック削減【設定した立場】牛乳パックの製造者
成城学園高校3年生 Y.Aさん
- 細田先生からのコメント
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冒頭で「ビニール傘の年間消費量は0.8億本」とシンプルに切り出し、論じたい問題を直球勝負で示す書き出しがとてもいいですね。他でも「プラスチックごみは1.5億トン」「ビニール傘一本あたりのプラスチック使用量は約3.6kg」など具体的な数字を要所要所で出している点も文章のうまさを感じさせます。一文も短くとても調子のよい文章です。
ミルクカートンで傘を作るという提案もとてもユニークなのですが、反面実現可能なのかという疑問が生じるのがこの提案の最大の問題点です。類似の実証例を示すなど、実現可能である証拠を示す必要があるでしょう。さらに、リサイクルの流れにまで言及できていないので、運用の全体像まで示すことができれば、説得力ある提案となるでしょう。