高校生環境小論文コンクール

2023年度の課題と受賞作品

受賞作品
 

最優秀賞(副賞:表彰状+図書カード15,000円分)

ちょっとした事から変えてみる【設定した立場】沖縄県にある大手企業の商品開発部

首里高校2年生 O.Kさん

細田先生からのコメント

 バナナの葉から採れる繊維の有効利用について論じた作品ですが、とても具体的で実現性が高い提案と言えます。沖縄の伝統である芭蕉の加工技術を活用する点や、弱点であるバナナの繊維のもろさを水切りネットに活用することでクリアする点、「年間約2億枚のネットを削減」などの数字による根拠が提示できている点など、鋭い着眼に加え非常に説得力の高い論を展開できています。文章もとても歯切れがよく、読みやすくまとまっています。
 惜しかったのは、最後の一文とタイトルが一般的で具体性に欠ける内容となったことです。最後の一文には、ここまでの議論の締めとなる具体的でパンチのある文章を持ってくることができれば完璧でした。また、タイトルも何についての論なのかを具体的にはっきりと示すとさらに魅力的な作品となります。

▲ほかの作品を読む

 

優秀賞(副賞:表彰状+図書カード5,000円分)

巨大ガチャで3R【設定した立場】玩具会社の社長

八幡浜高校1年生 R.Oさん

細田先生からのコメント

 若者に人気の「ガチャ」を自然環境の問題に結び付けたのは高校生らしい新鮮な発想でとてもおもしろいですね。実現すれば話題になることは確実でリサイクルやゴミ拾いのインセンティブとなることが期待できます。玩具会社の社長という立場と提案も一貫しており、文章も軽快です。また特に良いのが最後の一文です。一般的な文章で終わるものが多い中で、3Rの実現を強調し、単にリサイクルにとどまらず具体的にどのような展開が可能か述べておりとても効果的な締めの文となっています。
 ただ、ガチャ自体がプラスチックを使うビジネスモデルである点が気になります。ポイントが付与される、スマートフォンにデータが送られるといったプラスチックを使わないガチャのアイデアをもう一ひねりできるとさらに素晴らしい論となったでしょう。

▲ほかの作品を読む

 

優秀賞(副賞:表彰状+図書カード5,000円分)

ドリンクバーとマイボトルでプラスチック削減【設定した立場】コンビニエンスストア経営者

工芸高校3年生 K.Sさん

細田先生からのコメント

 「ドリンクバーの設置」と「折り畳み式水筒の販売」という提案は十分に実現可能な販売方法であり高く評価できます。ガソリンスタンドや駐車場の料金を支払うシステムを実例として挙げて販売方法を説明している点も、イメージがわきやすく実現性の高さを効果的にアピールできています。マイボトルを持たない理由を考察できている点も説得性の高さにつながっています。
 ただマイボトルは洗うことによる環境負荷が課題となるため、そのコストをどう考えるか触れることができるとより説得力が高い論となります。また、最終段落の一文目がやや意味が取りにくい点と、最後の一文が冗長になってしまった点も残念でした。論の締めとなる文はコンパクトにわかりやすくまとめるよう心がけましょう。

▲ほかの作品を読む

 

優秀賞(副賞:表彰状+図書カード5,000円分)

ペットボトルからマイボトルへ【設定した立場】環境大臣

天王寺高校2年生 S.Nさん

細田先生からのコメント

 マイボトル利用によるペットボトル削減というアイデアそのものはそれほど目新しいものではありません。しかし店舗にとってのメリット・デメリットに配慮し具体的な提案を行うことで、論の説得力を高めることに成功しています。ウォーターサーバーの宅配は既にビジネスとして成立しており十分実現性もあります。また文章の調子がよく、短い文章でも単調にならないよう工夫できており、センスが感じられます。
 ただ、最終段落で再度ペットボトルについて言及していますが、ペットボトルの話題は最初の段落にまとめたほうが構成上すっきりします。また、必要なお金は助成金で、というのはやや安易です。例えば環境税に言及するなどどこからお金を持ってくるかという視点があればより説得力が高まるでしょう。

▲ほかの作品を読む

 

優秀賞(副賞:表彰状+図書カード5,000円分)

脚力で光を【設定した立場】世田谷区長

成城学園高校3年生 M.Nさん

細田先生からのコメント

 「脚力で光を」というタイトル、「バイシクルエナジー」というネーミングがとてもユニークでいいですね。文章も読みやすく、数字を根拠として示したうえで、自転車発電の効果や仕組みを具体的に説明できているため、非常に説得力の高い内容となっています。ポイント還元などの行動を促す動機付けがしっかり考えられており、特に「区長とのランチ会」を区長自身が提案するおもしろさには笑ってしまいました。地域通貨「せたペイ」を使うというアイデアも区内で完結させようとする区長の提案として徹底されており、とても完成度の高い論です。
 惜しかったのは、提案のデメリットや弱点に言及がなかった点です。せっかく数字をそろえたのだから例えばコスト面についても数字を挙げて説明できていればより説得力の高い論となったでしょう。

▲ほかの作品を読む

 

優秀賞(副賞:表彰状+図書カード5,000円分)

無償配布教材の制度変更について【設定した立場】文部科学大臣

洛北高校1年生 M.Fさん

細田先生からのコメント

 まず、中高一貫校で無償配付される教科書が無駄になっている問題に文部科学大臣として取り組むという仮想の設定が非常におもしろいですね。大人があまり気付かない問題に自分の経験をもとにスポットを当て地に足の付いた議論ができています。憲法などの権利にも踏み込めており、力作だと思います。文章もとても洗練されており、冒頭から引き込まれます。
 ただ、検定を指示する側である文部科学大臣の立場で「検定教科書は不要」と言い切ってよいかは疑問が残ります。むしろ、高校生あるいは環境活動家の立場のほうが一貫した提案となるでしょう。そのうえで、検定教科書の制度や、それを無償給与するねらいのひとつである「格差のない教育」が本当に損なわれないかまで言及できると、より説得力ある論となります。

▲ほかの作品を読む

 

優秀賞(副賞:表彰状+図書カード5,000円分)

既存の外来種を減らしたい【設定した立場】外来種に悩まされる地域の市長

成城学園高校3年生 Y.Iさん

細田先生からのコメント

 最初の段落で外来種について短い文で端的に問題提起を行っており、とてもうまい書き出しです。問題提起に沿って2つの解決策を順に示していくという構成も筋道がわかりやすく、文章のうまさが感じられます。また、外来種レストランという解決策はとてもおもしろく、高校生らしい斬新なアイデアと言えます。最終段落で自分の提案の弱い部分を述べ、それでも実行すべきと結論付けている点も好感が持てます。
 ただ、外来種レストラン、外来種動物園の両者とも採算が取れるのかという点では疑問が残ります。特に外来種を食べるとなると衛生上の問題をどうクリアするかという問題も生じます。そうした懸念を払拭しビジネスとしてどのように成功させるかまで言及できると説得力ある論となります。

▲ほかの作品を読む

 

優秀賞(副賞:表彰状+図書カード5,000円分)

ポリ乳酸で作られた環境に最もやさしいプラスチックストロー【設定した立場】プラスチック製品開発会社の社員

成城学園高校3年生 H.Oさん

細田先生からのコメント

 快適さが損なわれるという紙ストローの問題を解決するために、代替品としてポリ乳酸ストローを使いポイント制による利用促進システムを作ろうという発想はとてもいいですね。「快適でなくとも環境のために我慢する」という精神論に逃げず、ポイント制で自然に環境保全に向かえる動機付けが考えられている点はとても好感が持てます。ポイント制の精神的負担といったシステムの弱点にも目配りし、その克服法にまで言及できているのもきちんと考えられている印象です。
 ただ、最後の2つの文章は蛇足であり、せっかくここまで緊張感のあるよい文章であっただけに残念でした。ここはパンチのある文章で締めたいところです。また、なぜ紙ストローを使うのかという根源的な問題についてももう少し言及できるとよいでしょう。

▲ほかの作品を読む

 

優秀賞(副賞:表彰状+図書カード5,000円分)

生ごみのリサイクル【設定した立場】都心の自治体の環境保全担当者

成城学園高校3年生 K.Kさん

細田先生からのコメント

 祖父がコンポストを使用しているという自分自身の体験を温室効果ガス削減へとつなげ、具体的に回転式コンポスターの使用を提案したことで、説得力の高い論となっています。通常のコンポスターのデメリットを指摘したうえで、それをどう回転式コンポスターで克服するか説明できている点もいいですね。文章も短くまとめ単調にならないよう工夫されています。
 ただコンポストは中々普及しない現状があります。都会ではさらに難しいでしょう。回転式コンポスターで問題解決するのであれば、なぜ今普及していないのか、どうすれば今後普及するのか説明したいところです。また、ざっくりでもよいので回転式コンポスターでどの程度温室効果ガスの排出を抑えられるのか数字で示すと、より説得力ある提案となるでしょう。

▲ほかの作品を読む

 

優秀賞(副賞:表彰状+図書カード5,000円分)

環境にやさしい畜産【設定した立場】酪農家

向陽高校1年生 W.Uさん

細田先生からのコメント

 「牛のゲップ」に含まれるメタンガスに着眼した点をまず評価したいですね。メタンガスの削減は気候変動対策に即効性があり無視できない問題ですから、よく勉強していると感心しました。数値データをもとに航空輸送の排出量と比較するなど非常に論の展開もうまく、引き付けられる魅力的な文章です。牛のブランディングというアイデアも実現例があるため非現実的な提案ではありませんし、フードロスの削減や排出権取引とつなげた点も評価できます。
 ただ、これだけ効果がある餌が現状では普及していないのはなぜなのか、認知の低さやコストとからめてはっきりと言及することができればさらに説得力の高い論となったでしょう。また「少し視点をずらして」という最後の一文で論点が拡散してしまったのも残念でした。「牛のゲップというあまり注目されないような問題にも目を留め、着実にできることから温室効果ガスを削減する努力が不可欠だ。」など論点を拡散させずに文章を締め括るほうが読者の印象に残ります。

▲ほかの作品を読む

 
 

ページトップへ