奈良大学/私のイチオシ
心が現実と折り合いをつけられない時、文学が力を発揮する

※掲載内容は取材時のものです
コレ知ってる?
あなたは今、本屋さんにいます。お目当てのマンガの新刊を見つけ、積まれている本の一番上の一冊を手に取りました。……もし、そのマンガのストーリーやセリフが、下に積まれているものと違っていたら、どう思いますか?
「出版文化」が定着している現代からは信じられないかもしれませんが、昔の人は、一冊の本が欲しい時には、筆を使い、すべてを紙に書き写していたのです。しかも、著作権という概念もないので、物語を書き換えたり、アフターストーリーを書いたりすることもありました。『源氏物語』も複数のパターンが残っていて、「紫式部が書いたもの」など存在しません。
今では古典文学も「出版」されており、こうしたことは一般に知られることはありませんが、「どのようにしてその作品が今のかたちで伝わったのか」を考えることは、国文学の大事な役割です。
この学問のココがおもしろい!
嫌な現実から目を背けたい時、どんなことを考えますか?
好きなこと、楽しいこと、綺麗なこと……大体このようなことではないでしょうか。昔の人たちも、同じように現実逃避のための想像をしていました。
今から800年以上前、源平の合戦(治承・寿永の乱)が起きました。そんな時代を反映してか、貴族の文芸である和歌は、『古今集』『源氏物語』といった「貴族たちが優雅だった時代」を描いた作品世界に入り込んでゆくものが主流になり、「目の前の現実」を詠まなくなりました。貴族たちは現実が嫌になってしまい、美しい幻想の中に逃げ込んだのです。……これは悪いことでしょうか? 私はそうは思いません。
現実と折り合いがつかない時、文学は力を発揮します。かつての過ちも、理解されない苦しみも、あるいは現実逃避でも、「ここじゃないどこか」や「私と同じ誰か」を想像することの助けになるのが文学だと思います。ぜひ国文学科で「自分の一作」を見つけてください。
キャンパスのお気に入りスポット
奈良大学はなんと言っても、図書館が充実しているところが素晴らしいです。大学図書館は、中学、高校や地域にある一般図書館とは一線を画しており、その道のプロたちが、何世代にも渡り蔵書を構築しています。奈良大学図書館は大学図書館ランキングでも1位*を獲得しており、その蔵書は質量ともに圧倒的です。
大学でないと見ることのできない知的資産に、ぜひ触れてみてください。また、奈良大学には博物館もあります。さまざまな展覧会を催しているので、こちらもぜひ。
*2019年版/朝日新聞出版調べ