職業能力開発総合大学校/私のイチオシ
日本屈指の設備を備えた「技能分析スタジオ」で技能科学を学ぶ
※掲載内容は取材時のものです
コレ知ってる?
皆さんご存じの「東京2020五輪競技大会・パラリンピック競技大会」のメインスタジアムや皆さんがお住まいの戸建て・集合住宅は、設計した建築家や施工会社の技術者だけでは建てることができません。よい建築家がいても、どんなに優れた技術を持つ施工会社があっても、実際に作業を担う技能者の方々の存在がなければ建物は建てることができないのです。そして現在、日本の建築業界は、建築生産に欠かせない熟練技能者の高齢化や若年者の人材不足によって技能継承が円滑に進まないという課題を抱えています。
そこで、技能継承に必要不可欠なのは、効率的な技能習得を可能とする教育方法・教材であるという考えから、卓越した技能者の技能を科学し「見える化」しています。見える化された卓越技能者の動作・重心・視線・力加減などを把握しながらトレーニングをすることで、効率的に技能の習得が可能になり、技能承継が円滑に進むことが期待されています。
技能科学は、今後の日本の建築業界に欠かすことができない学問なのです。
この学問のココがおもしろい
スポーツや武道をいくら練習しても上達せず、辞めてしまいたいと思った経験はありませんか? 私には水泳、剣道、野球、サッカーなど多くあります。
私が感じていたのは「どうやったら上達するのだろう?」「何かコツがあるのか?」「上達しているのかな?」などです。せっかちな性格のため、すぐに上達しないと気がすまなかったのでしょう。もし身近にモーションキャプチャーがあって身体の動きを客観的に把握して改善ができたり、力覚センサーで力加減を習得することができたら、五輪選手?も夢ではなかったかと…。
若年技能者の中には、せっかく興味を持って職人の道に進んだのに、私が水泳などを辞めてしまったのと同様に、技能を習得する前に離職してしまう方が多いのではないかと考えています。幼少期に私が感じていた「どうやったら早く上達するのだろう?」などの疑問を解決して、少しでも技能者の人材不足解消に役立つために「技能の見える化」に取り組んでいます。
ほかにも、建築生産現場の課題解決に向け、木造住宅の構造性能を向上させるための実験など、さまざまな研究を行っています。
キャンパスのお気に入りスポット
「技能の見える化」の実験を行うために、大学には専用の技能分析スタジオ(SAS:Skill Analysing Studio)が設けられています。SASには、身体の動きを測定するモーションキャプチャーカメラシステム(カメラ16台)、身体の重心や床反力、作業時に掛かる力が測定できるフォースプレート(固定式15枚、可搬式5枚、卓上式2枚)、作業時の視線が解析できるアイトラッキングカメラ(2台)、物を握る力や指圧が測定できるウェアラブル接触力センサー(2台)、各種解析ソフトなど、技能を見える化するために必要な機器が整備されています。今後も、作業時の脳血流が測定できるウェアラブル光トポグラフィ、手指の細かな動きが測定できるフィンガーキャプチャーを導入予定です。日本でも屈指の設備を取り揃えた技能分析スタジオにぜひお越しください。
このほかにも、建築物の構造性能を把握するための実験装置を多数設置しています。壊れない建築物を造る技能・技術を教えるために、たくさんの実験・実習で建物や部材を壊す経験・造る経験をしていただきたいと思っています。この経験ができる唯一の大学校が職業能力開発総合大学校です。