奈良大学/私のイチオシ
渡船存続の意味や背景を考察し、知られていない都市の姿を垣間見る

※掲載内容は取材時のものです
コレ知ってる?

日本を代表する都市の1つである大阪市の臨海部では、今も「渡船」が活躍中です。大都市の交通機関といえば地下鉄やモノレール、バスなどをイメージしがちですが、なぜ古めかしさを感じる渡船が残っているのでしょうか?
臨海部には工場地帯やコンテナ埠頭があり、大型船舶が行き来するため、低い橋脚の橋を架けることはできません。それが渡船が残る理由の1つです。また、渡船場で利用者を見ていると、自転車を押している方が最も多く、その次が徒歩です。自動車やバイクはそばにある巨大な橋を難なく渡ってゆきますが、自転車や徒歩でループ状急勾配の橋を上り下りするのは大変です。渡船場が残っている2つ目の理由は、そんな利用者のためです。
この学問のココがおもしろい!

世の中には、一見すれば時代遅れで前時代的に見えるものが残っていたり、使われていたりします。それらの中には、単にノスタルジーを感じるための観光・遊覧用のものや経費の関係で刷新できない遺物ではなく、「理由があって残っているもの」が存在します。その存続の意味や背景を考えてみることで、それまで思いもしなかった都市の姿を垣間見ることができます。
大阪市内には渡船とともに、九条付近に川底トンネルという施設が残っています。この施設は、第二次世界大戦中に渡船場が空襲被害で破壊されることを避けるため、川底にトンネルを掘削したのですが、現在でも使われています。
キャンパスのお気に入りスポット

奈良大学の地理学科では、2年生で日帰り、3年生で日帰りと宿泊の「巡検」という現地見学の機会を多く提供しています。個人ではなかなか訪れる機会のない場所への訪問はもちろん、宿泊巡検では実際に現地の役所や会社を訪ね、さまざまな業務に関わる方のお話しをうかがったり、資料をいただいたりすることで、観光的訪問では見えてこなかった地域の一面を知ることができます。