大学研究知ろう!
大学の研究って一体何を学ぶんだろう?
大学の研究室にインタビュー!

「小さな世界」のことわりを知り、
工学を使って世の中の基盤を
変える技術を研究して形にする

工学系統/機械工学
早稲田大学 岩瀬研究室

単純に小さい機械をつくるのではなく「小さな世界」を知り、工夫を重ねる

小さな水滴は丸くなるが、大きな水滴(大量の水)は水たまりのように平らになる。大きなものでは重力の影響が大きくなり、小さなものでは表面張力の影響が大きくなるからだ。「我々のサイズの世界とは違う理が働いているのが“小さな世界”です」と岩瀬英治教授は語る。つまり、大きな機械はエンジンを使って動かすが、微小なものは静電気の力や磁力を使って動かすというようなことだ。ただ小さな機械をつくるのではなく、その世界の特徴をよく知り、それを生かして役立てる研究に取り組んでいる。具体的には、物理学や機械工学を駆使して、伸縮可能なフレキシブルデバイス(柔軟な電子機器)を開発したり、引っ張って切れてしまっても自動で修復する金属ケーブルを開発したりしている。コンクリートの中や人の肌の表面で働く機器など、メンテナンスしにくい場所で有効に作動できるメリットがある。

マイクロマシン、MEMSなど微細加工技術でつくれるものとは

マイクロマシン、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ)は、文字通り小さな機械のこと。例えば、スマートフォン画面の上下が自動で変わるシステムでは、髪の毛よりも細いセンサーが重力を感知している。カラー画像を鮮明に映すプロジェクターには、微小な鏡が数万個も搭載されていて、それぞれが動くことで画像を映し出している。自動車のような大きな機械でも、内部には非常に細かなセンサーがちりばめられている。それらは、パソコンで形をデザインし、材料を加工し、検証・評価を繰り返して、実際に使えるように粘り強く確認する作業を経て完成する。

正解はない。問題すらない。研究とは、自分の頭で考えること

高校で学ぶ数学や物理は、用意された問題の決まった正解を求める。研究者として取り組む工学は、何を問題としてとらえるか、を考えるところから始まる。それは、研究の価値をどこに置くか、ということでもある。例えば性能がよくて高価なものと、性能はほどほどで低価格のもの、どちらが正解かも考える。使う人に求められる価値基準から決めるのが研究者の研究なのだ。問題のありかを考える、唯一無二の正解はない場合の対処を学ぶ面白さがある。そしてテーマは、人間社会の基盤を改善し、広く応用が考えられるものが多い。工学で未来をよりよく変えることをめざしている。

研究に必要な文理の力

この研究につながる科目・教科

小さな世界の理を知るには、物理が不可欠なうえ、数学や化学も基本的に重要だ。最近のエンジニアリングではコンピュータを利用するため、情報の授業も大切に。もちろん情報収集や発表活動を行う場面で英語も使う。

学生の研究テーマ

人間社会を支えている基盤の一部をマイクロマシンによって変えることで、さらに暮らしやすい社会を実現できるよう、研究に取り組む学生が多い。4年生の卒業研究で「研究の醍醐味だいごみ」を味わうことができる。

学問の手引き

機械工学は、力学などの基礎科目を学んだ後、機械設計や材料、制御や加工など、必要な知識をひと通り身につけてから、製作を行う。実習・実験科目も多く、手を動かしながら“ものづくり”を追求できる。