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人間の言語を数学で読み解き、
暮らしを豊かにする
アプリケーションを開発する
東北大学 坂口・乾・徳久研究室
この研究室に必要な志向性の内訳
乾・鈴木研究室では、人間が日常的に扱うことばを理解し、自在に扱うコンピュータをつくる研究を行っている。日常生活で使っているWeb検索や外国語翻訳システムなどにも貢献する研究だという。それらの研究には問題発見力・検証方法の設計力など多くの力が必須になる。将来は、次々と生まれる社会課題に対して、解決策を提案できる人材の育成をめざしている。
この研究につながる科目・教科
言語を数学で読み解く際に使うのはベクトルや微分積分など、高校で学ぶ数学の知識。コンピュータを使うので情報の基礎は押さえよう。国内外のデータから必要な情報を収集するので、英語、国語の知識も欠かせない。
この研究の学問の手引き
- 情報工学
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〈他に関連がある学問〉
- 総合情報学
- 情報科学
- 電気・電子・通信工学
情報工学は、コンピュータについてのあらゆる研究を行う。ハードウェアとソフトウェアの理論と技術を人間社会に役立てて、問題解決を図る学問だ。AI、プログラミング、ネットワークなどをキーワードに具体的な研究内容を調べよう。
東北大学(国立大)工学部電気情報物理工学科情報工学コース / 坂口・乾・徳久研究室(自然言語処理学)
人間と同じ言語活動ができる人工知能の開発をめざす
人工知能の研究は、人間の能力をコンピュータに持たせて、人間を手助けしたり社会をより豊かにしたりすることを目的としている。なかでも、人間と同様の言語活動をさせようとしているのが、東北大学の乾健太郎先生率いる自然言語処理チームだ。
人間は常識や文化、意思や感情から自然発生的に誕生した「自然言語」を使う。一方、コンピュータの言語は人工的につくられ、常識や意思とはリンクしない「形式言語」である「プログラミング言語」で動く。人間のように考えたり、常識や感情を持ったりということができない今のコンピュータが、自然言語を理解しているとは言い難い。
文系と理系、両方のセンスを使う“国語や英語を数学で読み解く” 研究
言葉を理解するには、人はどんなときに喜ぶか、机やいすは何に使うか、といった無数の“常識” が必要だ。これをコンピュータに学ばせると、人間に似た言語活動が可能になる。そこで注目したのが、SNS など1日に何億件も更新されているビッグデータ。そこに書かれた人々の日々の“経験” から“常識” を学ばせる。学ばせる量は多いほどよいので、ネットのビッグデータは格好の材料といえる。
問題は、まだ言葉の理解力に乏しいコンピュータがどのようにしてSNSの文章から常識を学ぶかだ。解決のかぎは数学にある。高校でも習うベクトルや行列、確率、統計といった数学の道具をフル活用する。数学という理系の学問で、言葉を読み解くという文系の営みに迫っていく。理系だから数学を使う、文系だから国語を使うなどと考えるのではなく、両方を上手に手段として使えば、文理系の枠を超えたより深い研究が可能になる。
研究成果は「ファクトチェック」や「歌詞制作」などのアプリに反映
人工知能が暮らしに役立つ好例に、フェイクニュースのファクトチェックがある。世間にあふれる情報の真偽を人工知能が見抜き、人間が最終のファクトチェックをしやすいようにサポートする。この研究室と、ファクトチェック・イニシアティブ(ファクトチェックの普及・推進を目的としたNPO)、スマートフォンのニュースアプリと連携し、精度を高めている。
メロディー情報を入力すると、自動的に情緒的な歌詞を考え出すアプリを開発中の学生もいる。これもコンピュータに、あるテーマの歌詞でよく使われる単語や曲調の“常識” を学ばせることにより実現した。今後は文法的にも正しく、人間がつくるものと遜色のない歌詞の生成をめざしている。
人工知能は、あくまでも人間を助けるために存在する。最終的に考えるのは人間である、というスタンスがこの研究室の基本。人工知能を研究していくうちに、どれほどの能力が人間にあるのかを痛感できる非常に興味深い学問分野だ。