海専門の法律家「海事代理士」のオシゴト
弁護士、司法書士、公認会計士など、高度な専門知識を持つ「士」という名称がつく職業がある。これらの職業のうち、あまり知られていない職業に「海事代理士」がある。海にかかわる法律のプロフェッショナルとして海運業者の事業を支えている、この職業をチェック!
海の仕事に関する公的書類の作成・手続きを担う
船で物や人を運ぶ海運業には、航海の安全性が強く求められる。新しい船の届け出や免許の更新など、さまざまな場面で書類を提出し、行政の許可を得なければならない。法律の知識がないと難しいこうした手続きを、海運業者に代わって行うのが海事代理士の仕事だ。
法律に関する知識や、ミスなく書類をつくる正確さに加えて、「海の安全を守りたい」「海の仕事を応援したい」と思う気持ちが大切になる。
行政書士や弁護士との兼業が一般的
海事代理士と似た職業として、司法書士や行政書士が挙げられる。事務手続きを行うのは一緒だが、扱う分野や法律が異なる。海事代理士の資格を持つ人でないと海事関連の手続きを行うことは、禁止されている。
とはいえ、海に関する法律には限りがあり、海事代理士の業務範囲はあまり広くない。多くの人が行政書士や弁護士と兼業しているようだ。
ほかの士業になってから手を広げるのが一般的
海事代理士になるには、国家試験である「海事代理士試験」に合格しなければならない。
一次の筆記試験の合格率は例年50%前後。一見、合格率が高く思えるかもしれないが、受験者の多くが司法書士や行政書士など、すでに法律家として働いている人なので、見かけの数字よりも試験の難易度はずっと高い。また受験者数が少ないため、大手の資格学校でも対策講座を見つけるのは困難だ。
いきなり海事代理士をめざすよりも、司法書士か行政書士になってから、改めて資格取得をねらうのが現実的だろう。そのほか海運業、造船業の経験を積み、業界内につながりをつくってから独立して事務所を開くコースもあるようだ。